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もう少しでA!

大橋美由紀(イラストレーター)
1999年~2003年在籍

私は1999年の春に入学し、その年にセツ先生が亡くなってしまったので、先生と共にできた日々はほんのわずかでした。

入学して最初の授業で、いかに足を美しく描くかということをセツ先生が力説し、一番前に座っていた私に、「お前のボーイフレンドの足は、いい足か?悪い足か?」といきなり聞いてきたのでびっくりしました。
 「はい… いい足だと思います… 」と答えた私に、いたずらっぽい笑顔で「ホントかぁ~?!」と言ったセツ先生。
 なんだかすごい学校に入っちゃった…!と思ったものでした。

大学卒業後、何をやりたいのか決まっていなかったので、好きな絵を勉強してみようかなと、アルバイトをしながら通い始めたセツ。
 モデルデッサンは大好きで、下手ながらも楽しんでやっていたのですが、水彩画は思うように描けず、四苦八苦していました。

セツ先生の水彩の合評が何回あったのかはよく覚えていないのですが、私が唯一もらった言葉は「これ、もう少しでA!」
 それだけははっきりと覚えています。
 よし、これからセツ先生にAをもらえるようがんばるぞ、と思っていた矢先、突然のお別れとなってしまいました。
もう先生からAをもらうことはできなくなってしまった、と悲しい気持ちでしたが、でも「もう少しでA!」が、なんだかだんだん自分にふさわしく思えてきたのです。
 「お前はもう少しでAなんだから、もっと描きなさい。もっと学びなさい」と言われているようで。

今でも、思うように描けず、私って駄目だなあと思うときには、「もう少しでA! だからあきらめずに描きなさい」と励まされているような、逆に、少しは上手く描けたかなと思うときには、「まだまだ、もう少しでA!」とたしなめられている気がするのです。
 セツ先生の最後の生徒として(なんていうと大げさですが)、これからもずっと、試行錯誤しながらも描いていきたいと思っています。

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  1. 星信郎 より:

    大橋美由紀さん こんにちは星です。

    美しい足のうんちく講座、その様子が蘇って思わず爆笑してしまった。
    「もう少しでA!」それは残念でしたね、 しかし、いまこの絵をみたら、先生もこんなにかっこよく描いてもらっては文句なし特A!でしよう。でもしかし、いつまでも「もう少しでA」の方がずっといい。大橋さんウマいこと言う。
    もともとセツ先生はファッションイラストレータであるから、ファッションイラストレーションを教えようとしていたようだ。そこで大橋さんは、その数少ない実の弟子だと思います。

    1999年 セツ、モードセミナーは火の消えてしまった後の寂しさであった。そんな時にも大橋さんたち仲間は明るく明るく元気だったので救われた思いがします。

    • 大橋美由紀 より:

      星先生、コメントありがとうございます!

      セツ先生の美しい足講座は衝撃でした!
      将来のことが全く見えていなかったあの頃、セツに入って、セツ先生とファッションイラストレーションというものを知れたことが、私にとってこの上ない幸運だったと思っています。
      実の弟子、、星先生にそんな風におっしゃっていただけて、胸がいっぱいです。

      私たちは、星先生はじめ諸先生方が支えてくださったおかげで、元気に学ぶことができました。
      私は、個展の時はいつも、星先生に「A」をもらえるだろうかと自問自答しながら制作しています。
      これからも厳しい目で、よろしくお願いします!

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