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強烈!SETSUスパーク!

早乙女 道春②(イラストレーター)
1986年~1990年在籍

「3倍のくじ引きを突破してセツ・モード・セミナーに入学したものの、ホンモノの長沢節先生が眼の前に居るという事実に、私は緊張して胸がイッパイだった。最初の頃はデッサンしている先生の姿を遠巻きに見ていたり、コーヒーブレイクの時間になると決まって階段から降りて来る姿を見るにつけ、まるで神様にでも接するようにただ遠くからぼーっと眺めているだけだった。自分が絵をどう描いて良いのやら、まるで見当もつかずに、ただ訳もわからずに見よう見まねで手を動かしているような有様だった。
 時折、午前部と午後部の間に長沢先生の講義の時間があって、その時ばかりは常に一番前の砂被りの席に陣取った。その日先生が話してくれたテーマは、現在で言えば "ジェンダー論" だが、当時はそんな "論" はこの世に存在しておらず、長沢先生独断思想内の吐露で、曰く、「この世には、"人間らしさ" 、" その人らしさ" というものだけがあり、"男らしさ"、" 女らしさ" などという、そんなものは決して存在しないのよっ!」…. この言葉が私の脳内で強烈にスパークしてしまった。

セツに通いながらも私は当然のごとくIVYスタイルで原宿や六本木に屯していた。おまけに週末には愛車ベレットGTを駆り、自動車レースに明け暮れていた。周りは皆HIPなことなら何でも知ってるお兄さんやお姐さんだったので、大人不良な事柄をなんでも吸収出来てとても楽しかった。が、時折先輩から「おい、早乙女、男ってモンはよぅ… 云々」と、"男らしさ"について一席ブたれると、はい、と話を聞きながらも楽しかった私の気持ちは一瞬でどんよりと重たくなった。逃げ出そうかと思った時さえあった。ただ、自分の気持ちが何故どんよりと重たく、逃げ出したくなるのか、20歳の私にはわからなかった… 。そんな悩みを抱えていた矢先の長沢先生の講義だった… …。

「"男らしさ" そんなものは決して存在しないのよっ!」… ガ~ン! … 私は "存在しない" ものに苦しめられていたのかっ?! … 頭がスパークして真っ白になった私は、講義終了後のコーヒーブレイクタイムに意を決して、庭に居る長沢先生に声をかけた。「先生、自分の周りに "男らしさ"とか、"男ってモンはよぅ"とか、そういうことにコダワリを持つ人達ばかりに囲まれていた場合、僕はどうしたらよいでしょうか???」
一瞬、長沢先生の眼の奥がキっと光った。… そして次の瞬間、満面の笑みを浮かべた先生は私の耳をひっぱりながら、
 「… … それはとっても勇気のいることね~っ!」
その一言だけを残して二度と振り返ることはなく、あの歩き方で去って行ってしまった。先生のその後ろ姿を私はぽかんと口を開けて立ちすくんだまま、ず~と見ていた。

以来、疑問に思ったことは何であれ、勇気を出して長沢先生に直接聞いてみることを決意した… 。
 
(つづく)
 

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  1. 星信郎 より:

    早乙女君の心境わかるね〜、僕はセツ入学1960年であったからなおのこと、理想とする男性は三船敏郎、鶴田浩二、石原裕次郎のころだった。
    穂積先生河原先生、時折り現れる黒須さん同期の金子功君たちスマートでしなやかで、ヘンな世界に来てしまったと思った。
    後に銀座ワシントン靴店でセツ先生が性別の無いファッションシヨーをしているが、いま思うに、あれは30年ぐらい早すぎた試みであったのではなかろうか? しかしその時に峰岸達も池田和弘も一流モデルにまじって、どうどう参加しているのだから面白い時代であった。

    • 早乙女道春 より:

      星先生、ありがとうございます。
      「… … それはとっても勇気のいることね~っ!」
      て、言われた瞬間は意味解らなかったけど、現在になって想い出すと、
      凄い答えだな〜!と、つくづく思う次第であります。m(_ _)m!!

      早乙女道春 拝

  2. 内川瞳 より:

    『それはとっても勇気のいる事ね〜』ってだけで1を聞いて10を知るのでしょうか?其のくらいセツ先生の一言は余韻を残しますね〜自分で考えるしかないよと冷たく言わないで考える力を後押ししたのでしょうか。な〜んて言ったら早乙女くん立場ないね〜本当は僕の悩みにどう答えるか,またはお話のキッカケを掴んだのでしょう?
    何でも訊かれるのが先人の優れた人の宿命だから、食い下がって突っ込んで質問,,,,,なんてできないわよね。でも印象に残る質問だったと思う。私など当時はあんまり疑問に思う頭脳の持ち主ぢゃ無かったので、なんかそばにいたから話そうとしゃべったら『早すぎて何言ってるか分かんないよ』と言われて己の早口を知ったのでした。悲しかったです。うそだけど。
    それから早口は治らず去年の暮れに星先生の個展のとき、今度は星先生に『早口で何言ってるか分かんないよ」と言われやはり悲しかったです。うそだけど。キャハ。

    早乙女サンの語る熱き時代のセツ物語はびっくりで微笑ましいです。色んな思いや影響を受けて自分を開拓したのですね。

  3. 早乙女道春 より:

    星先生、ありがとうございます。
    「… … それはとっても勇気のいることね~っ!」
    て、言われた瞬間は意味解らなかったけど、現在になって想い出すと、
    凄い答えだな〜!と、つくづく思う次第であります。m(_ _)m!!

    早乙女道春 拝

  4. 早乙女道春 より:

    内川瞳先輩

    いつもありがとうございます!((^o^))!

    早乙女 拝

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