全国版コラム 大皿こぼればなし

ブロッコリー

春入千林処花
 
数年前から自宅の近くで菜園をしている。精米畑でいろんな種類の葉もの、実のもの、根菜を育て、旬の味を楽しむ。今年はブロッコリーを三株植えてみた。スーパーで見かける結球しているものではなく、ステックブロッコリーを選んだ。寒気に耐え、体にたまったエネルギーは暖かくなると爆発し、ぐんぐん成長する。株の中心の花芽は膨張するかのように大きくなり、こぶしクライになったら収穫。その後、葉のわき芽からわんさかわんさか伸びてくるステックブロッコリー。

台所に持ち帰り鮮度のいいうちに軽く湯がき、冷水にくぐらせる。マヨネーズでもよし、ドレッシングでもよし、シンプルに一塩でもいける。多く採れたときは天ぷらでも楽しむ。水溶き小麦粉を薄くまぶして油の中に入れる。色、形を変えながら軽く泳がして引き上げると半透明の衣が色香を放つ。山菜のような独特な「えぐみ」はないけれど、和洋折衷の味は嫌味なくおいしい。自分が手をかけ時間をかけたからなおさらだ。食の基本は「愛ある食材」だとぶつぶつひとり言を言いながら、ニヤつく。

収穫を終えた三株のブロッコリーはさらに伸びて、黄色い花がいっせいに咲いた。春の色だ。どこにこの色彩があったのか。無言のブロッコリーは、精いっぱい生を謳いあげ一人前の表現者だなあと思う。花のある茎をハサミで切り取って束にして、肩に背負い家までひとっ走り。舞い上がる花びらの黄、黄。なんという幸福感。バケツに水を張り「ようこそ」。今、自宅の玄関前はいっぱいの春色で飾られている。

みどりからきいろ、きいろ、春ブロッコリー   宗介