全国版コラム 大皿こぼればなし

きしめん

風

きしめんは、大好物の一つである。うどんより薄くて半透明、喉越しよろしく形状もいい。地方によって呼称は異なるらしい。「ひもかわ」「ぺろっこ」と耳からも楽しい。

二月のある木曜日の午前のこと。昼食の青写真をルンルンで描いて、食材の買い物に出かけた。テーブルの上には、ふわふわのおぼろ昆布、その上にかつおの削り節がのった二層構造のどんぶりが匂い立ち、笑顔の自分が食べている。その予定だった。しかし、なのだ。自転車の前のかごに入れたままにして置いたのが間違えだった。無い、無いのである。ビニール袋は無残にも破られて主役のブツが消えている。見上げれば上空にカラスの黒、黒。こちらを笑うかのように悠々と旋回しているではないか。自分VS.カラスの図式で、敗者は自分。ひらひらと天空を舞っている。手の届かないところにきしめんちゃんは行ってしまった。さようなら僕の昼食。決して泣きません。笑ってカラスに手を振ったりして…。重いペダルを踏みながら、色褪せたイメージを頭の中に描いていた。麺不在食卓 ― まぁいっか!

考えてみれば、毎週木曜日は可燃物収集日。忘れていました。室外に食べ物を放置することはもっての他なのだ。貴方のブツは、狙われています。お互い気をつけたいものです。

袋破り ちょっとそこまで 一麺旅     宗介