全国版コラム 大皿こぼればなし

勉強会

雲中に白鶴

この会は毎年12月の第一土曜日午後3時から開催される。もう10年以上続いている。場所は横浜の小高い丘にあるH氏邸。彼は彫刻家で、入口からいたるところに無造作に作品が置いてある。作品は素材が鉄なので酸化して錆びているけど、屋敷まるごと彼の歴史なのだ。3時頃からぽつりぽつりと人は集まりだし、ゆるりと始まる。

テーブルの上には持ち寄りの煮物、サラダのほかH氏の奥さんの手作り料理。部屋の中程にあるストーブに大鍋のおでん。ことこと時間をかけて煮込んであり、まことにおいしい。白はんぺんは「味がしみこんでます」と言わんばかりの色になり、根菜類は箸を軽くあてると崩れそうになるくらい柔らかい。練り物は、だしに深みを加えいい顔をしている。平皿には刺身、小鉢には香の物。一通り頂いた後に本筋の「勉強会」が始まる。

持ってきた作品を各自順々にイーゼルに立てかけて周りが感想を述べる。作者もその作品の背景を語り、イーゼルを中心にして花が咲く。手作りの詩集をひとりひとりに手渡しするS氏。ハーモニカ奏者もいて体を揺らしながらパンチの効いた曲を奏でる。アンコールの一声。食と絵と彫刻。大声とはしゃぎ踊りと笑い。アルコールもいい感じに体にまわり、心も赤く温めてくれた。帰りの時間を気になりだす者が一人二人・・・必ず自分を含めグダグダのんべいはいるもの。昨年までとは違い奥さんの体調がすぐれないということで、今回は泊まり不可。ぎりぎり土俵際でお暇をする。来年の勉強会での再会を約束して散会。「Hさん、お互い元気で来年もよろしく」

馴染みの顔、味と語らふ勉強会   宗介