初夏の陽射しが降りそそいでいます。中津江村の森林は、今日も輝くばかりの緑。

中江津村って? そう、サッカーワールドカップでカメルーンの選手たちがやってきて、大騒ぎになったあの中津江村ですよ! もう10年以上前の話ですから、そもそも日本でワールドカップが開催されたことを知らない世代の方も多いかもしれない。でも当時は「日本で一番有名な村」と言われ、「ワールドカップ(中津江村)」がその年の流行語大賞に選ばれました。

その中津江村も今では過疎化、老齢化を通り越して、「限界集落化」に向かっています。過疎化で人が減ってさびしくなっていく、その過程で主に若い世代が「仕事がない」などの理由で村から出ていくものですから、残った人々は必然的に老齢化していきます。これが「限界集落化」になると、「なんだかさびしい」なんていう情緒的な事態ではありません。「村に一人の警察官(交番)は隣村と統合しようか」「公共交通機関(バス路線)は廃止しようか」「救急車も維持できないな」というような話が出てくると、「住んでいて身の危険を感じる」ようになる。都会に住む皆さんにはこんなことわかんないでしょう? でも現実にそうなんです。
かつての輝きが今も人々の記憶の片隅に残る中津江村がこうなのですから、いわゆる日本の山村が今どういう状況なのか、想像できますよね。

 

林業やってます

先日、東京で友達に紹介されたAさん、初対面なのでまずは自己紹介から・・・
田島「中津江村で林業やってるんです」
Aさん「大変ですねえ」
田「よくご存知ですね」
A「でもたくさん森を持っているんだからさぞやお金持ちなんでしょうねえ」
田「森は持っていますがお金は全然ありませんよ」
A「へえそうなんですか・・・」
・・・まったく会話になっていません。
林業とは、「山に木を植え、育て、伐って売る仕事」です。これに尽きます。植える苗木を生産する、森に入るための簡易な道路を建設する、伐採に使う機械を修理する、伐った木をトラックに積んで市場に運ぶ・・・その他多くの林業に付帯する仕事はありますが、「林業とは何か」を一言で述べると、これしかありません。しかし、単純すぎるようなこの一言、意外と奥が深いんです。その理由は、次回からお話ししていきます。

profile

田島信太郎 Shintaro Tajima
田島山業株式会社 代表取締役/大分県林業経営者協会理事/(社)九州経済連合会九州次世代林業研究会委員/日田林業500年を考える会会長 1980年慶応義塾大学法学部卒。西武セゾングループ代表室勤務を経て、1988年、父、祖父の急逝に伴い、家業を継ぎ林業経営者となる。日田林業500年目にあたる1991年、子どもたちを対象とした森林環境教育、また学生、社会人の森林ボランティア受入れを開始。「断固森林を守る」取り組みを続けている。

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