第34回 有田と染付 vol.1

有田と染付

日本の色といって、僕がまず思い浮かべるのは、青。
日の丸の赤を思い浮かべる人も多いかと思いますが、少なくとも工芸的な意味合いでは、青なのではないかと思います。
たとえば、やきものの世界では「染付(そめつけ)」という青い絵付けの磁器があります。
400年前に大陸から伝わったこの染付は、ベーシックな絵付けの器として、今や日本の食卓においてなくてはならないものに。青という色は、長い時間をかけて日本の工芸文化の中でも重きをなす色になっていったと言えそうです。

有田と染付

幼い頃の暮らしを思い出してみると、うちの食卓では、染付が登場する頻度がかなり高かったように思います。
伝統紋様が細かく描かれていたり、または草花が描かれていたり、絵柄はいろいろ。
器屋になった現在も、幼い頃のそんな記憶が残っているからか、染付に対しては郷愁のような想いが。
お客様には「このお店は青い器が多いわね」などと言われることもあり、染付を中心にした食卓提案をしてしまうのは、僕のクセになっているようです。

有田と染付

染付の器体である磁器(石が原料)は、陶器(土が原料)と比べて強いのが特徴。ヘビーユースにも耐え得るので、電子レンジが普及し始めた時代には重宝される器でした。
ただ、僕の子供時代(昭和40年代!)を思い起こしてみると、当時「無地の白磁を使う」という選択肢はあまりなかったように思います。
今から見れば少々滑稽にも見えますが、炊飯器や保温ジャーなどの家庭用品も無地ではなく、花柄などの模様が入っていた時代。装飾デザインをめぐる時代背景が、昭和の食卓における染付の拡散を後押ししたと言えそうです。手頃な価格で手に入る絵付磁器として。

有田と染付

当時は、「ヘビーユースできる日常使いの器といえば磁器」→「絵付けを施したものが欲しい」→「比較的手に入りやすい染付を使う」という構図が成り立っていたのかもしれません。
昭和の時代にはその利便性が好まれた染付ですが、最近は、それとはちょっと違った視点で愛されるようになってきているように思います。
そのあたりについてはまた次の回に。