news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

送電線の電磁界による健康影響と国内外の対応―その1―

私たちは、発電所から送電線を通じて送られる電気を使用して生活しています。送電線に電気が流れると、電磁界が発生します。磁石や地磁気など、周波数がゼロの電磁界を静電磁界といいます。

私たちが使用する電気は50Hz(ヘルツ)または60Hzの周波数で、超低周波電磁界に分類されます。携帯電話の電波は800MHz(メガヘルツ)や2GHz(ギガヘルツ)ですので、高周波電磁界に分類されます。3THz(テラヘルツ)になると光の領域、3000THz以上になると放射線の領域になります。今回の話題は、超低周波電磁界です。

送電線等から発生する超低周波電磁界に曝露すると、体の中を電気が流れますので、神経や筋肉の活動に影響します。しかし、送電線や変電所からの電磁界はそれほどの強さではありません。

ただし、低強度であっても、長期間曝露すると人の健康に影響を与えるかもしれないとの報告があります。例えば、0.3から0.4μT(マイクロテスラ)以上の磁界に曝露すると小児白血病の発生リスクが高くなると報告されています。但し、その発生機序は十分わかっておらず、証拠は限定的と考えられています。

日本では、経済産業省が磁界に対する規制を導入し、「電気設備に関する技術基準を定める省令」を平成23年に一部改正しました。規制値としては、変圧器、開閉器等や電線路等を変電所等以外の場所に施設する場合には、当該施設の周辺において測定した空間の磁束密度の平均値が200μT以下となるように設置するという内容です。

この規制は、高レベルの磁界への短期的な曝露によって生じる健康影響への対応として、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が公表したガイドラインに基づき定めたものです。低レベルの磁界による長期的な健康影響については、更なる研究プログラムを推進し、リスクコミュニケーション活動を充実させることとなっています。

次月のトピックでは、欧州諸国における対応を紹介します。
 

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