news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

化学物質による公衆衛生への影響

この報告書では、2012年に世界中で130万人の生命と4300万の障害調整生命年(DALY: disability-adjusted life-years)が一部の化学物質への曝露によって失われたと報告しています。ただし、この報告書の推算値は、ごく一部の化学物質だけに基づいており、実際にはもっと多くの化学物質に曝露していると報告しています。推算に使用された化学物質を以下に示します。

1.急性中毒物質
1)予防可能な非意図的物質
メタノール、ジエチレングリコール、灯油、殺虫剤等
2)非意図的な産業中毒物質
同上
3)殺虫剤

2.長期間影響する単一の物質

3.長期間の影響を有する職業性曝露の物質
1)職業性の肺がん
ヒ素、石綿、ベリリウム、カドミウム、クロム、ディーゼル排ガス、ニッケル、シリカ
2)職業性の白血病
ベンゼン、酸化エチレン、電離放射線
3)慢性閉塞性肺疾患を生じる粒子(ダスト、フューム/ガス)

また、非意図的な中毒によって、毎年19万3千人が死亡し、その多くが予防可能であると報告しています。さらに、中毒センターを有している国は、世界中で約47%しかないと報告しています。

鉛含有塗料の規制を行っていない国は未だに多く、鉛への曝露を規制することによって、知的障害の9.8%、虚血性心疾患の4%、脳卒中の4.6%を防ぐことができると報告しています。

上記の推算には、空気汚染が含まれていません。大気汚染(粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物、ベンゾ[a]ピレン、ベンゼン、その他)、室内空気汚染(一酸化炭素、窒素酸化物、二酸化硫黄、ベンゼン、ホルムアルデヒド、多環芳香族炭化水素、粒子状物質、その他)、受動喫煙(ニコチン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、フェノール、窒素酸化物、ナフタレン、タール、ニトロソアミン、多環芳香族炭化水素、塩化ビニル、金属類、シアン化水素、アンモニア、その他)の3つだけで、2012年に世界中で860万人の生命と2億65000万の障害調整生命年(DALY: disability-adjusted life-years)が失われたと報告しています。

WHOの報告書は、以下のサイトで入手可能です。

Public health impact of chemicals: knowns and unknowns
http://www.who.int/ipcs/publications/chemicals-public-health-impact/en/

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