news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

ラドンによる室内空気汚染

ラドンは、地中の壊変したウランから生じる放射性ガスです。従って、土壌や岩石に含まれている天然物です。そのため、土壌から室内へ、あるいはラドンを含む土壌や岩石で建築した建物では建材から室内へ侵入し、室内空気中の濃度を上昇させます。

ラドンは、無味無臭、無色の気体ですので、呼吸器を通じて肺に取り込まれ、肺がんを引き起こします。国際がん研究機関は、ヒトに対する発がん物質と認定しており、その発がん性は、喫煙者でより高くなるとされています。

ラドンは、喫煙に次ぐ肺がんのリスク要因とされています。世界保健機関(WHO)は、ラドンについて、以下のような室内空気質ガイドラインを定めています。

喫煙者6.7 Bq/m3(1000分の1の発がんリスク)
非喫煙者167 Bq/m3(1000分の1の発がんリスク)
*安全な曝露レベルは存在しないが健康影響(肺がん)を最小限にする参照レベルとして100 Bq/m3を推奨

室内のラドン濃度は、欧州で高い国が多く、平均濃度で100 Bq/m3を超えている国がいくつかあります。日本では平成19年度から平成21年度に全国3432の家屋を調査したところ、13 Bq/m3でした。

アメリカでは、平均46 Bq/m3と報告されていますが、アメリカでもラドンは喫煙に次ぐ肺がん要因とされており、年間2万1000件がラドンによる肺がんで死亡していると報告されています。

そこでアメリカは、2011年に「連邦ラドン行動計画」を策定し、これまでに10万5000棟以上の集合住宅でラドン対策を実施してきました。そのような状況の中、アメリカ環境保護庁は、2015年11月10日に新たな「国家ラドン行動計画」を発表しました。この国家計画では、ラドンに起因する肺がん死亡数を2020年までに年間3200件減らすことを目標にしています。

この計画には、ラドンによるリスクを削減するために、ラドン検査のシステム、ラドン対策に関する住宅に対する融資制度や保険制度、建築基準法におけるラドンリスク削減対策の制度化が含まれています。そして、500万棟の住宅、学校、託児所で高レベルのラドンを削減することを目指しています。

この計画には、アメリカ肺協会、アメリカラドン科学者技術者協会、アメリカ住宅調査士学会、国立健康住宅センター、放射線管理計画会議、環境法研究所、小児環境保健ネットワーク、ラドン肺がん患者会、などの関係団体が協働しています。また、関係省庁では、米国住宅都市開発省、米国保健社会福祉省が協働しています。

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