江分利満家の方かい 山口正介

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めったに自宅で食事をすることがないのだが、炊飯には土鍋を使用している。
 美味しく炊けるということは知っていたが、電気釜よりも簡単だということは購入するまで知らなかった。
 しかし、利用するようになったのは二〇一一年に母が亡くなってからしばらく経ったころからだった。
 色々な小料理屋などで食事をしていると、とても美味しい炊き込みご飯などがあり、理由を聞くと、たいがいが土鍋で調理しているからだという。

 わが家はかつて、電気釜であった。それは父の瞳がまだ元気だったころで、一家三人で夕食を共にしていた。
 そんな或る日、僕は御飯が美味しくないことに気がついた。
 なんというか、堅い芯があるオジヤのようなものになっていた。
 母にそのことを問いただすと、近所の米屋で一番いい米を買っているのだから、そんなはずはないというのだ。あたしは変だとは思わないという。父はこういうときは中立を守って口出ししないのだった。
 これは自動炊飯器が壊れているんだと考えた僕は、自分で買ってくるから、一度は試してくれと言って、もよりの量販店で最新式のものを購入してきた。
 その最新型最高級の自動炊飯器で御飯を炊いたところ、驚くほど美味しいのだった。
 父も、これは正介の言うことが正しい、と賛同してくれた。母はまだ釈然としない様子で、古い炊飯器を棄てるのは惜しい、と言っている。

 そんなことがあったのだが、土鍋で炊けばさらに美味しいというので、数年前に二合炊きのものを購入した。
 しかし、火加減が難しいのは困る。土鍋も現在では色々と改良されていて、途中で火の調節をしなくてもいいものがあるのだった。 二合の場合、中火で十分半、火を止めてそのまま十分半待って、しゃもじでざっくりと混ぜて、中蓋を外して、本蓋を閉めて、そのまま十分ばかり待てば出来上がりである。
 火加減と水加減、加熱時間は三回ほど試せば、最適な状態が分かりますよ、と小料理屋の店長に教えられたが、一回目から美味しく炊けていた。
 トータルの調理時間もガス釜や電気釜よりも短いのではないだろうか。
 

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