江分利満家の方かい 山口正介

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今年は庭の南西の角にあるユズの木に実が百個以上も成った。実に不思議なことだ。
 天候不順で作物が実らないといわれているのに、大豊作となった。しかし、一つ一つの実の大きさは、かなり小ぶりである。
 我が家の庭には花の咲く木も実のなる木もあるが、どうしたかげんか、いずれも花は咲かず、実はならない。ただただ巨木となって青々と繁るばかりである。

 六年ほど前、庭の片隅に黄色いものが落ちていた。近づいて拾い上げるとユズの実だった。瞳が元気だった頃に植えたが、一度も実をつけることがなかった。だから、大変驚いたのだった。
 見上げると、まだ三つばかりが枝にぶら下がっていた。さっそく選定バサミで採り入れ、母、治子に見せたものだ。以来、コンスタントに数十個の実をつけるようになった。
 しかし、庭の土壌が長年の酷使から疲弊していることは火を見るよりも明らかだ。少し掘ってみると薄茶色の土は乾燥していて固くしまっている。これでは植物の根が張ることもできないだろう。
 十年ほど前には、雨が降ると庭が水浸しになり、何本かの木が枯れるということがあった。このときは水はけが悪いと言われた。懇意にしている植木屋さんに頼んで排水のためのちょっとした工事をしてもらった。
 それは土中深くに太い竹筒を活けて、余計な水を逃がそうというものだった。これで効果があったのかどうかは分からない。その後、木が枯れなくなったかというと、そんなこともない。

 例の瞳が奥多摩の山中からもらい受けてきた雑木のうちの最後の一本であったソロの木が去年、枯れたのだ。
 そこで、去年から落ち葉を掃かず、そのままにして自然と腐葉土になるようにしている。また、雑草も生えるにまかせ、年に二回、伸びたところをバッテリー草刈り機で刈り、これもそのまま堆積させている。
 何年か後には地力が回復するだろうという目論見なのだが、どうなりますことやら。