ようこそアンティーク・マーケットへ

古道具屋の仕入れの旅はショップやフールセラー(卸売業者)、フェア、イベントに合わせて毎日が移動の連続です。日本と違って何処もだいたい17時頃で終わるのですが、それから宿を決めてその日買ったものの整理をして通関用の商品撮影、書類づくり。作業が終わるのはだいたい22時くらいでしょうか。翌日、フェアやイベントがある時は朝4時頃出発、ショップ等を廻る場合でも朝9時までにはオープンしますので、つぎの目的地までの移動時間も見込んで間に合うように動き出します。宿ではシャワーを浴びて寝るだけ、酷いときには車の中で仮眠だけなんて時もあります。

 

最もオーソドックスなペーパーホルダー。カッターのように見えるカバーは、正式には押さえ蓋と呼ぶそうです。
最もオーソドックスなペーパーホルダー。
カッターのように見えるカバーは、
正式には押さえ蓋と呼ぶそうです。

 まれに、廻るところが集中していて連泊となると、ゆっくりできることもあります。小さな田舎町に一軒だけあるパブが経営している安いB&Bに、2泊連続で泊まったことがありました。部屋はベッドと机以外はほとんどスペースがなく、バスルームは共同。それも日本のユニットバスに毛が生えたぐらいのスペースしかありません。値段が値段ですからあまり贅沢は言えません。それでも階下がパブなのは助かります。荷物を置くと、早速出掛けてビター(苦みが強く、薫り高いイギリスの生ビール)を堪能しました。いい加減酔っぱらったので、シャワーは朝にすることにして、ベッドに入る前にトイレに寄りました。用を足しているとき目に入ったのがペーパーホルダー。剥き出しのロールペーパーが逆向きに取り付けられています。「ペーパーぐらいちゃんとつけろよ!」と毒づきながら切口が手前に向くように付け直してから部屋に戻りました。

 

翌日、早朝から出掛けて買い付けを済ませ、夕方に宿に戻って一休み。パブへ繰り出す前にトイレに立ち寄りました。便座に座っていると昨日直したロールペーパーがまた逆に戻っています。取り替えるときに、「また間違えやがった」と思いましたが、昨夜の泊まり客はおそらくボク一人、今も他に人の気配はありません。それに減り方が昨夜のまんま。不思議に思って、パブでビールを注文するときに他に泊まり客はあるのか聞いてみると「昨日と今日はお前の貸し切りだ」と言って笑っています。変だと思いながらも、その時はそのままにしてしまいました。

 

逆真気になっている画像。piccolo vagabondo(http://vagaoku.exblog.jp/9970841)というブログから拝借しました。イタリアでも逆巻きが結構あると書かれています。
逆巻きになっている画像。
piccolo vagabondo
http://vagaoku.exblog.jp/9970841
というブログから拝借しました。イタリアでも逆巻きが結構あると書かれています。

 順調に買い付けが進み、何日かしてトラックが満載になったので、コンテナに積み込んでくれるシッパーのところへ荷物を下ろしに向いました。途中の公衆便所に入ると、そこも紙が逆向きにセットされています。今までもときどき見かけてはいたのですが、おおかた付け間違えだろうと気にしませんでした。しかし、宿屋での一件を考えると、意図的にやっているとしか思えません。気になりだすと頭にこびり付いて離れません。シッパーまでの道すがら、ずうっと考えていましたが何も浮かびません。到着して荷物を下ろしながら聞いてみました。すると、「別にどっちでも良いんじゃない。使いやすいようにすれば」との返事。「だって逆向きじゃ、カッターが使えないじゃないか」と言うと、不思議そうな顔をして「カッターって何だ?」と聞きます。「とれちゃっているのも多いけどホルダーについている金属の板だよ」と答えると、「日本の紙ってそんなに固いのか?こっちのは大抵ミシン目が入っているし、そうじゃなくっても、片手で押さえて引っ張れば簡単に破けるぞ」「じゃあ、あの板は何の為についているんだ?」「あれはカバーだよ、埃や水がかからないようにする屋根みたいなもの。だから無くても別に困らない」・・・たしかに、逆向きに取り付けられていたのは狭くて、目の前に壁が迫っているようなトイレでした。切口が手前にくるように取り付けると、距離が近すぎて引っ張り難いのです。そういえば、ヨーロッパではホルダーの取り付け位置が日本より高めのところが多い気がします。

 

ボクの店は大正時代の和式トイレでしたが、座ると前の壁に頭がつきそうな狭さでした。前の壁につけられたペーパーを引き出すときには、いつものけ反るようにして使っていました。そこで、ペーパーを逆向きにセットしてみると、いたって使いやすい。日本製のペーパーホルダーにはご丁寧にギザギザの刃がついているのもよくありますし、すっかりカバーをカッターと思い込んでいたので、こんな簡単なことにも気がつきませんでした。なるほど、取り付ける場所によっては逆向きの方が良いこともあるようです。しかし、日本では、ペーパーの切口を意図的に逆に付けているところはたぶん無いでしょう。どうも西洋人の方が頭が柔らかいようです。

 

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