ようこそアンティーク・マーケットへ

大きく蛇行しながらロンドンを流れるテムズ川。
大きく蛇行しながら
ロンドンを流れるテムズ川。
 
パリを流れるセーヌ川。淀んだ水はどっちに流れているかも判らない。
パリを流れるセーヌ川。
淀んだ水はどっちに流れているかも判らない。
 
Troyesから河口のLe Havreまで直線距離で約300キロもあるのに高低差は約120mしかない。
Troyesから河口のLe Havreまで
直線距離で約300キロもあるのに
高低差は約120mしかない。
 

イギリスのディーラーの家で夕食を御馳走になりました。キッチンのパインテーブルを囲んで奥様と三人でワイン片手の気軽な晩餐。食事が終わってからも、残りのワインを飲みながら、とりとめのない話しが続きます。あとかたづけをする奥様は、傍らのシンクにお湯を張り、洗剤を注いで手でかきまわし泡立てると、次々に汚れた皿を突っ込んでいきます。すべての食器を泡の中に沈め終わると、その中で汚れをスポンジでこすり落として自ら引き上げ、シンク横に並べていきます。シンクの中が空になると、布巾で泡の残った半乾きの皿を吹き上げていきます。まさかとは思って、それとなく見ていると、やはりそのまま格納庫の中へ納めてしまいました。そしてシンクの栓を抜く為に右手を泡だらけの水の中に突っ込んだところで電話が鳴りました。すると彼女は左手で受話器をとって応対しながら右手で栓を引き抜き、受話器を肩に挟むと先ほど皿を拭いていた布巾で泡だらけの腕を拭いました。電話が終わると冷蔵庫からチーズを出してきてボクらのいるテーブルに腰掛けると「私も一杯貰うわ」とグラスを差し出します。

 

ここまでくると、さすがに気になって聞いてみました。「手を洗わなくって大丈夫?」すると二人ともキョトンとしています。英語の語彙の乏しいボクには濯ぐという事をどう表現していいかわかりません。洗剤で洗った後に真水で洗い流すという事を説明しましたが、何を言っているのか判らないという顔をしています。彼らは洗剤は身体にいいとでも思っているのでしょうか?「日本では食器でも身体でも必ず最後に水洗いをして洗剤を洗い流す」ということを説明すると、「その方が良いと聞いたことはあるけれど問題ないわ」との返事、たいして気にしている様子もありません。拭き取れば大丈夫と言わんばかりです。

 

日本では水と安全はタダといわれてきましたが、これは世界的に見て極めて特異なことなのです。細長い島国でありながら、中心を森に覆われた山脈が連なり、海に向かって幾筋もの河川が直線的に勢い良く流れています。潤沢なキレイな水に恵まれ、我々はそれを贅沢に使うことを当たり前と思って暮らしてきました。ところが平野の広い大陸では高低差がないため河川はうねり大河となり淀んだ水がゆっくりと流れています。高い山や森の少ないイギリスでも同様です。中には雨が降った時だけ現れる溜まり水のような川まであります。限られた河川では水場の近くに暮らせるとも限りません。上水道が完備するまで溜まり水などを利用して暮らしてきた彼らにとって飲み水は勿論、洗濯や身体を洗う水も貴重なのです。極力水を使わない暮らし方が染み付いているのかもしれません。西洋人は日本ではトイレで尻まで洗うらしいと笑っていますが、水が贅沢に使えることへの羨望の裏返しなのかもしれません。

 

コメント一覧

コメントを書く

タイトル
お名前
コメント

皆さまのコメントをお寄せください。
管理者の承認後の掲載とさせていただきますので、掲載までに少々お時間をいただきますことご了承ください。

Back namber