ようこそアンティーク・マーケットへ

海外へ出て仕事をするようになって、さまざまな国の人たちと頻繁に接するようになりました。始めのうちは対応に戸惑うばかりで、国によって随分いろいろと違いがあるものだなぁと感心したものですが、付き合いが深くなっていくにつれ、どこの人でもたいして違いはないなぁ、と思えるようになってきました。そんなボクの買い付け旅行とはこんな感じです。

 

 

初秋の晴れた日、ボクはイギリス人のディーラーと連れ立って、ボーンマスからフェリーに乗りブルターニュに渡りました。船は早朝サン・マロに到着、港内にある船員相手のカフェで食事を済ませて出発です。北西フランス特有の緩やかな丘陵地帯をぬける快適な国道を走行中、大きめなデポ・バンを見つけ、入ってみました。初めての店です。カウンターにはフリフリの服を着た派手な顔立ちのマダム。店主のようです。家具もいっぱい置いてあったのですが、どれもどでかくて日本向けではありません。小さいものを探すと、ピューターのメジャーや小振りなカット・グラス、ランプシェードなどを見つけることができました。

 

清算を済ませて箱を車に積み込んでいると、白人の若者が話しかけてきました。これからボストンでアンティーク・ショップを始めるという、調子のよさそうなアメリカ人です。適当にあしらっていると、彼の肩ごしに見える店のドアからマダムが顔を出し、手招きしています。何かと思えば大型の家具をトラックに積み込むのを手伝ってほしいとのこと。連れ立って店内に戻ると、通路に巨大な書棚が引き出され、その前でマダムと買い主と思われる小柄な男が途方にくれています。高さは2メートル以上、幅も4メートル近くある日本ではまず見掛けることの無い代物です。品物の溢れた店の中ではとても2人で動かせそうにありません。マダムの掛け声にあわせて4人掛かりでなんとか搬入口に横付けされたトラックまで引きずるように移動させました。ここからが大仕事、胸の高さほどある荷台まで家具を引き上げるのです。今度はマダムも加勢して5人掛かりです。不思議なことに、力を入れるタイミングを合わせる掛け声は、言語が違っていてもみな理解できるのか、打ち合せなど無しにボクの「いっせいのっせっ」という声に合わせて動いてくれます。大汗をかいて積み込みが終わると、一同思わずその場に座り込んでしまいました。

 

買い主はイタリアからきたディーラーのようで「グラッチェ、メルシー、サンキュー」とお礼に大忙し。ボクらが一服していると、マダムが瓶ビールを下げて現れました。さすがフランス女性、先ほどの髪を振り乱した鬼のような形相はどこへやら、髪を整え、服も着替えて涼しい顔。トレーの上にはグラスとナッツがのっています。ガーデン・テーブルへ移動して皆で御馳走になることにしました。テーブルを囲んで和やかに歓談といきたいところですが、全員母国語が違い、片言で各国訛りなので巧くいきません。1対1ならまだしもこれだけ混ざってしまうと、誰かが話し始めると脇で通訳するものが現れ、そのうち誰が話していたのか判らなくなってしまいます。そんなヘンテコな会合でも、それぞれのお国柄が出るようです。したり顏で話す紳士面をしたイギリス人、私は特別とでも言いたげなフランス人、やたらと陽気だけど抜け目なさそうなイタリア人、調子はいいけど何を考えているか判らないアメリカ人。彼らにはボクはどのように見えていたのでしょうか?

 

買い付け旅行

 

 

 

 

 

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