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古来、日本の食卓は膳でした。貧しい世帯では盆や床に直置きというところもあったでしょう。どちらにしても食べ物は膝の高さまでに並ぶことになります。しかも、膳は膝より前、身体から少し離れた位置になります。明治の時代となって庶民の家庭でちゃぶ台が普及するようになってきても、この高さと位置関係は変わりありませんでした。近年のちゃぶ台は高くなっていて膝が入るものもありますが、もともとは膳に近い低さで、下に足が入る隙間は無かったのです。

 

こうした状況では、上半身を直立させたまま食器を手元に持ってくる食事スタイルにならざるをえません。西洋のように頭を食べ物の上に突き出すのは至難の業ですから。そうなると頻繁に手にする飯碗と汁碗が手前に並ぶことになります。そして左手に茶碗を持ち、箸で取り分けたおかずを茶碗に受け口元まで運ぶ、または、小鉢に手を伸ばし持ってくるような場合でも腕は手前の器の上を横切りますが、膳に対して上からアクセスするので干渉することがありません。とても理に適った並び方だったのです。

 

 

大正の時代にかけて西洋文化がだんだんと広まるようになってきたと言っても、テーブルと椅子を使えたのはごく一部の富裕層、まだ海外の様式を忠実にコピーすることを贅沢として楽しんでいましたから、食事も西洋式にナイフ、フォークが普通。それがだんだんと庶民にまで広まり、第二次大戦後になると一般も家庭でも一気にテーブルと椅子の生活に切り替わっていきます。そして、それまで膝の高さ,前方の膳やちゃぶ台に並んでいた料理が、そのまま身体の直前に広がる肘の高さのテーブルの上に並ぶようになってくるのです。

 

本来なら、このとき新しい位置関係に合わせた配膳のスタイルを考えるべきだったと思うのですが、日本人は昔からのスタイルを引き継いでしまったのです。その結果、前回でお話ししたような、何とも具合の悪い汁碗の位置となってしまいました。それでも我慢強くて従順な日本人は、都度、自分たちで工夫しながら根本的な改善をしないまま、今日まで過ごしてきてしまったのです。

 

だからといって、明日から、これも前回ボクが提案したような並べ方に変えればすべて解決、ともいかないようです。食卓が美しくなくなるというのです。見慣れないせいもあるのでしょうが、食器のデザインや盛りつけなど、旧来の並べ方が前提になっているのが原因ではないでしょうか? 他の文化を取り入れ、自分たちのしきたりと折衷させるには、食卓に関わる人すべての意識の統一が必要になるのかもしれません。

 

 

 

 

 

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