ようこそアンティーク・マーケットへ

「ほらっ! またやった! 本当にそそっかしいんだから」
小学5年生のボクは母親に叱られました。汁碗をひっくり返したのです。
「味噌汁がこんなところにあるからだよ! なんで、こんなところに置くんだよー」「それが決まりなの! 勝手なこと言わない!!」「そんなこと誰が決めたんだ。絶対におかしいよ」「誰ってずーっと昔から、みんなそうしてきたの。屁理屈いわずに注意なさい」・・・そうです。ずーっとそうしてきたのです、日本では。

 

食卓には向って左手前にご飯の入ったお茶碗、右手前に味噌汁の入ったお碗、その奥におかずののった平皿と小鉢が続き、食卓の中央付近には漬け物の入った大きな鉢と醤油などの調味料が並んでいます。ボクは、醤油を取ろうと手を伸ばしたときに肘を引っ掛けて味噌汁をこぼしてしまったのです。この並べ方、我が家独特のものではありません。高級な日本料理店、料亭はもとよりファミレス、大衆食堂に至るまでほとんど同じような並べ方で配膳されます。ところがこの並べ方だと、大多数である右利きの人がおかずに箸を伸ばそうとすると、汁碗の上を腕が横切ることになります。大人ならまだしも、身体の小さな女性や子どもではボクのような粗相をしやすくなります。実際、食堂で観察してみるとほとんどの方が、食べ始める前に汁碗の位置を手が引っ掛からない場所へ移動しています。きっと皆、1度や2度はお碗をひっくり返したことがあるのでしょう。

 

では、なぜこのような並べ方になったのでしょうか?理由は意外と簡単で、持ち上げる頻度の高い順に手前から並べてあるのです。西洋では食器を食卓から持ち上げることは、ほとんどありません。料理を手元の皿に取り分け、そこからフォークやスプーンで口まで運ぶのです。自然と姿勢は前屈みになり、テーブルの上に頭を出すようになるのです。それに対して、日本では器を持ち上げるのが普通です。口を付けることさえあります。直立した姿勢でその都度必要な器を手に持つのです。右手で箸を使う人が多いので、自ずと器を持つのは左手ということになります。ですから先に述べたような左手前に頻度の高いお茶碗からというような並べ方になるのです。

 

母に嗜められても納得のいかないボクは宣言しました。「どう考えてもこの並べ方、おかしいよ。ボクはご飯の後ろに味噌汁がくるべきだと思う。そして手前におかず、これなら腕が皿の上を横切ることがない。これからボクにはこのように並べて。そうすればもうこぼさないよ」「何勝手なこと言ってるの、自分の失敗を棚に上げて。そんなこと、できるわけないでしょ」「じゃいいよ、自分で並べ替えるから」・・・それからボクは食事の前に皿を並べ替えるのが日課になりました。もちろん、それで汁碗をひっくり返すことは、めったになくなりました。

 

食堂で出てきた一般的な並べ方
食堂で出てきた一般的な並べ方
ボクはこれが正しいと思う並べ方
ボクはこれが正しいと思う並べ方

 

 

  実際にやってみるとこのほうが明らかに具合がいい。左手に持ったお茶碗を下ろしたら、そのまま手を先に進めれば汁碗が取れる。おかずに箸を付けるのも、すぐ目の前の右側にあり都合がいい。どうして昔の人がこの並べ方にしなかったのかが不思議です。しかし、これには必然ともいえるわけがあったのです。

 

その理由については、また次回に・・・

 

 

 

 

 

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