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浮世絵の中のナンバ歩き

前回では、現代の日本人と西洋人の歩き方の違いについてお話ししましたが、この差は何処からきたものなのでしょう?我々は服装や履物が変わっただけで、昔からいまのような歩き方をしていたのでしょうか?

 

日本古来の歩き方としては、前に陸上選手が取り入れて好結果をもたらしたという「ナンバ走り(歩き)」が有名です。佐川急便の飛脚のマークでお馴染みの手と脚同時に動かす歩きかたで、明治以前ではこの歩き方が一般的だったとも言われています。時代劇で見る裾の長い袴で歩く姿がまさしくそれです。

 

西洋風な歩き方では、平均台の上を歩くように一直線上に脚を置いていきますが、ナンバ歩きでは左右の脚をそれぞれ、上体とともに肩の前に真っ直ぐ踏み出していきます。すると左右の脚は平行線上に置かれ、肩は前後に揺らすようになり、自ずと膝を外に向いてガニ股気味となります。が、昔の人がみんなこんな歩き方だったというのは俄には信じられません。そもそも、ナンバという呼称は南蛮に由来し、この身体の使い方は海外からもたらされたという説もあるそうです。どちらかというと、特別な目的のためにつくられた動きという気がします。相撲や柔道などのスポーツもこういう身体の使い方をします。

 

さて、建物の出入りが数ヶ所のドアに限られる西洋の建築に対して、日本の住居はあらゆるところから出入りができるようになっていました。日本では屋内では履物を脱ぐ習慣なので、出入りの際、脱ぎ履きが容易な突っかけタイプの履物が発達していきました。屋内でも靴を履いたまま過ごす西洋では履物を脱ぐ機会は滅多に無く、活動的に動き回る暮らし方には足をしっかりと包む靴が必要不可欠でした。

 

そんな履物を活かして、西洋人たちは上体を前に向けたまま、腰は左右に動かし、後方に地面を蹴りだして歩いていきます。さらに、スピードを速めようとすると上体までも捻りながら進んでいきます。西洋では広範囲に分散して暮らしてきましたから、移動すること自体が目的であることも多く、自分の身体を移動させるために全身を効率的に使っているのです。

 

一方、我々日本人は密集した集落を形成して暮らしてきましたので、長距離の移動は日常的ではありませんでしたし、スピードもそれほど要求されません。歩く時は、物を運ぶ手段であることも多かったと思われます。足には突っかけタイプの履物を使用していますから、上体は動かさず、身体を起こして足を前に置くように進むほうが理に適っています。一部には腰に刀を差す習慣もありましたので、腰を捻っていては具合も悪かったでしょうし、このように歩けば履物を飛ばしてしまう心配もありません。

 

いまや、街を行き交う人々のほとんどが靴を履く時代。それでも、歩き方まではなかなか変わらないようです。

 

 

 

 

 

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