ようこそアンティーク・マーケットへ

 食べ物に関してはまさしく雑食ともいえる我々日本人、一般の家庭の食事ですら、朝に和食、昼はイタリアン、夜には中華なんてことも珍しいことではありません。もちろん、日本流にアレンジされたものであることが大半ですが。それでも、さすがにパスタを茶碗、スープボウルで味噌汁とはいかないものです。勢い食器はどんどんと増えていきます。確証はないのですが日本人とは世界一食器を持っている民族ではないかと思います。

 

 早くから定住し、農耕に従事してきた我々の祖先は、土器から始まり様々な焼き物に親しんできました。運搬を考えないため、それほど量の制限も無かったので、そのつど料理に合わせた食器を用意してきました。早くから料理を目で楽しむ感性を持った日本人は、ただ器に取り分けるだけではなく、器と合わせて盛りつけにも工夫を凝らしてきました。これも食器の種類を増やす要因でした。そして、海外との交流が盛んになり、さまざまな国の食文化が紹介され、取り入れられるようになってくると、それにあった食器を用意して、さらに種類が増えていきます。その結果、多種多様にふくれあがった食器類を見つけ出しやすいように「食器棚」と呼ばれる、上部がガラスのキャビネットで下部に引き戸か扉と引き出しを備えた、日本独特の収納家具が誕生するのです。

 

 一方、狩猟民族である西洋人たちは、日々の移動のため荷物は最小限、食器も限られた物しか持ち歩かなかったでしょう。それも破損しづらい金属器や木器が中心。そのせいもあって、ヨーロッパでは陶土の発掘に熱心でなく、陶磁器の普及が進みませんでした。もともと食材を焼いたり、茹でたり、煮込んだりしたものをそのまま盛りつける素朴な料理が主だった西洋では、食器といえばプレートとボウルが中心。各々サイズ違いで数組あれば大抵のことは事足ります。重ねて収納すれば、たいしてスペースも必要としないうえに、その状態でも判別しやすく、必要な物を取り出すのも容易です。ですから、一般の家庭ではシンク廻りの戸棚に無造作に納められていることが多く、とくに「食器棚」というものは必要としないのです。

 

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基本的な日本の水屋箪笥。中部地方のデザイン。これに引き出しや
開きがついたものを重ねて使われることも多い。
 

 現代のようなシステム化されたキッチンになる以前は、小さなロッカーのような、食器収納庫とでもいうような家具を使っていました。同じように、古くは日本でも「水屋箪笥」といわれる大きな箱に引き戸をつけただけのような箪笥が収納庫として使われました。洋食が入ってくるまでは、食器持ちの日本でもこれで充分だったのです。

 

 

 

 

 

 

 

ワードローブのように見えるがじつはフランスの食器収納庫。
ワードローブのように見えるが
じつはフランスの食器収納庫。
中には棚が作り付けられている。
 
1940年代のイギリスのカップドレッサー。
1940年代のイギリスのカップドレッサー。
ティータイムに使うカップ&ソーサーを棚に
飾り、ケーキプレート等を下の開きに収納す
る。カトラリーの引き出しを備えた物も多い。
 

 西洋では18世紀になって磁器が一般的になり、その後紅茶やコーヒーを嗜む習慣が広まるにつれ、新しい形の食器ティーカップの置き場としてカップドレッサーという家具が使われ始めます。それまでの食器収納庫の上にカップを飾る棚を付けた物で、比較的日本の食器棚に近い家具と言えるかもしれません。しかし、ただ収納するだけではなく、飾ることも兼ねているのでその収納容量はしれたもの。日本で使うには問題も多いのです。

 


 ここまで書いてきたように、この違いは主に食文化の多様性の差というのが主要因ですが、もう一つ、家具に関する考え方に大きな違いがあるのです。それについては、また次回に・・・

 

 

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