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Oillamp 灯油を燃料とするランプ。19世紀のフランスの物
灯油を燃料とするランプ。
19世紀のフランスの物

前回をお読みいただければ、暖炉の暖房器具としての効率の悪さはお判りいただけたことと思います。それでも広く使われてきたのは暖炉には部屋を暖める以外に重要な役割があったからです。その最も重要な仕事は部屋を明るくすること。電気が普及するまで、暖炉はコストパフォーマンスに優れた照明器具でした。ですから、暖かい季節になっても暗くなると窓を開けて暖炉を燃やすなんてこともあったのです。

 

電気が普及する以前の照明といえばガス灯、油や石油を燃料とするランプ、蝋燭などが思い浮かびます。この中で一番古くからある物が蝋燭、紀元前から使われてきたと言われています。現代の蝋燭は石油を精製して作られるパラフィンワックスを型に流し込んで作られますが、昔は蜂の巣を溶かし、濾して得られる密猟やハゼの実から作られる木鑞などが原料です。暖めて液状化した鑞に芯となる草や紙、紐等を浸し、引き上げて冷やしてはまた浸すことを繰り返して棒状にするという、手間のかかったものでした。当然貴重なものですから、専ら支配階級か宗教儀式などに使われていて、なかなか一般家庭にまでは行き渡りません。

 

 そんな蝋燭に対して経済的だったのが少し遅れて登場してきたランプです。皿状のものに燃料を入れ、芯を浸してそれに着火するという原始的なものから火屋をもちキレイに効率的に燃焼するものに改良されていきます。近年では加圧した燃料を暖めて気化させて大光量がえられるものまで開発されていました。使われる燃料は菜種油などの植物油を中心に使われていましたが、魚油、鯨油なども使われ、特に鯨油は捕鯨技術の発達から安価で大量に供給できるようになり、石油から灯油が作られるようになるまで、最もポピュラーな燃料となっていきます。おかげでクジラは絶滅の危機に瀕するようになったのです。

 

欧米人と話していると、まるで日本が悪者というような論調が多いのですが、日本ではクジラを食用を含めヒゲからシッポまで有効に利用してきましたから、保存が利かず輸送手段が限られた中では、無駄にならないように調整して捕獲してきました。しかしクジラからランプの燃料として保存のきく油だけを採って、残りは捨ててしまう欧米諸国は手当り次第に乱獲したため、その生息数を激減させてしまったのです。

 

蝋燭とランプは光量は少ないものの移動が可能で小刻みに点けたり消したりすることが可能です。ですから必要なときに手元のを照らす照明としては有益なものでしたが長時間、広範囲を照らすとなると荷が重い。18世紀頃から使われ始めたガス灯は改良が進みかなりの光量が得られるようになっていきますが、如何せん設備が大袈裟でなかなか普及せず、電気が使われ始めると、すぐに廃れてしまいます。

 

そんな中、暖炉は部屋全体を照らす照明として広く使われてきました。他にも簡単な調理器具として煮炊きや保温の熱源とされたり、洗濯物を乾かす役割も担ってきたのです。

Firebasket 本来は石炭やコークスを燃やす為の道具。現代では薪を置いて使っている光景も見られる
本来は石炭やコークスを燃やす為の道具。
現代では薪を置いて使っている光景も見られる

 

今でも暖炉で使われている道具としてファイアー・ドッグというものがあります。薪を直接床に置くと燃え難いので、空気の通りが良くなるように薪を浮かせる為のバーのことです。シンメトリーを基本とする西洋ですから、通常2本一組で使われます。ドッグは古い物になるとこれに器が載せられるようになっていたり、フックのようなものがつけられています。また棒が渡せることができるようになっているものあります。前回紹介した都市部などで石炭やコークスを燃やす比較的新しい暖炉では、ドッグの代わりにファイアー・バスケットと呼ばれる太い鉄材を格子状に組み合わせた火皿が使われます。この頃になると電気やガスが普及し始めるので古いドッグのような役割は考えられなくなります。

 

未だガスや電気がない時代には、暖炉の炎は様々な用途の熱源としても利用されてきたのです。

 

Firetool 変形ファイアードッグ。19世末頃と比較的新しい物だが鍋などが置けるようになっている
手前の大きいほうがフランスの17世紀の物、奥のがスコットランドの18世紀の物
Firedogs 手前の大きいほうがフランスの17世紀の物、奥のがスコットランドの18世紀の物
変形ファイアードッグ。19世末頃と比較的新しい物だが鍋などが置けるようになっている

 

 

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