イタリア、ラヴェンナの悠久の時間を感じながら・・・モザイク散歩

京都造形芸術大学芸術学研究室勤務後、イタリア・ラヴェンナに渡りモ ザイク工房ココ モザイコにてアリアンナ・ガッロに師事。 工房ではモザイク技術の習得と同時に日本からのモザイク研修などをプ ロデュースする。帰国後は東京でモザイク工房モザイコカンポをオープン。 銀座・エコールプランタンや、イタリア語語学学校等でモザイク教室を 開講、美術館や大学でのワークショップも随時開催。
モザイコ カンポ/Mosaico Campo(東京)https://mosaicocampo.com/
ココ モザイコ/Koko Mosaico(イタリア ラヴェン ナ)https://kokomosaico.com/

vol.6RAVENNA MOSAICO

モザイクには、硬くて小さく加工出来る素材ならば何でも使えます。例えば角砂糖やチョコで作ればきっとスイーツモザイク。宝石や純金で作ったモザイクだって存在します。

 

そんな中で、ローマ時代から今日まで広くモザイクに使われ続けている素材が、大理石、ズマルト、オーロ、貝殻、小石...などなど。加工が比較的容易で、耐久性がある素材たちです。今日はこれらの素材についてご紹介します。

 

1.大理石

主に、床モザイクに使われる、大理石。イタリア語ではMarmo(マルモ)と言います。大理石の魅力は何といっても、自然が生み出す色の美しさ。白、黒、赤、黄色、緑、グレイ...特に「割れたて」は、瑞々しい!初めて空気に触れる小さな結晶が微かにキラキラと光って、思わず見蕩れます。

また、石によって割れ方、硬さ、質感、全て違います。例えば白系マットな大理石は素直だけど、模様が入っている石は頑固なものが多い、とか。緑は硬いものが多く、黒は割れると硫黄のにおい。ギュッと引き締まっているものもあれば、ぼろぼろと崩れるようなゆるいものも。同じ大理石の種類でも、採掘地が違うとやはり割れ方は変わります。

 

白大理石を、マルテリーナとタリオーロという伝統的なモザイク用の工具で割ります。
白大理石を、マルテリーナとタリオーロという
伝統的なモザイク用の工具で割ります。
白大理石断面 細かい結晶が光ります。素直な断面。
白大理石断面 細かい結晶が光ります。素直な断面。
赤大理石をカット。
赤大理石をカット。
模様に沿うように断面がいびつに割れています。
模様に沿うように断面がいびつに割れています。

 

ズマルト 教室ではヴェネツィア産ズマルトをメインに使っています。
ズマルト
教室ではヴェネツィア産ズマルトをメインに使っています。

2.ズマルト

モザイク用のガラス素材、Smalto(ズマルト)。今でもヴェネツィア本島内で、職人の手で作られています。教会の壁や天井モザイクに使われる事が多い素材で、大理石にはないビビッドな色と質感が魅力です。

 

オーロ各種 厚いガラスの上に金箔を乗せ、その上に薄いガラスでコートしています。銀もあります。
オーロ各種
厚いガラスの上に金箔を乗せ、
その上に薄いガラスでコートしています。
銀もあります。

3.オーロ

VOro(オーロ=金)は、金箔をガラスで挟んだもの。ズマルトと同じく現在も職人の手仕事で作られています。光に当たるとキラリと瞬くので、薄暗い教会の中では特にその力を発揮します。揺らめくろうそくの光や、窓から差し込む日の光を反射して、幻想的な雰囲気を演出します。

 

左上から時計回り。ムリーネ(金太郎飴のようなガラス素材)、貝殻、小石2種(川石。海の石は塩分が入っているため使えません)、タイル2種。
左上から時計回り。
ムリーネ(金太郎飴のようなガラス素材)、
貝殻、小石2種
(川石。海の石は塩分が入っているため使えません)、
タイル2種。

4.その他

小石や貝殻は、大理石やズマルト、オーロと同じように、何千年も昔から使われてきた素材です。小石を使ったモザイクはMosaico di ciottoli(モザイコ ディ チョットリ)と呼ばれ一つのジャンルを形成していますし、貝殻では真珠母貝などは、高貴な人物モザイクの装飾に好んで用いられました。もちろんタイルも昔から大切なモザイクの素材で、現代では様々な種類のタイルモザイクを見ることが出来ます。

モザイクの魅力の一つは、素材の魅力です。大地が永い時間をかけて作った大理石の色、質感。職人が毎朝色チェックをして維持しているズマルトのグラデーション。自然のもの、人の手によるもの、さまざまな欠片(テッセラ)を織り交ぜて、世界に一つだけのモザイクが生まれ、そしてまた長い時間残ります。素材を生かすモザイクをじっくり作っていきたいですね。