イタリア、ラヴェンナの悠久の時間を感じながら・・・モザイク散歩

京都造形芸術大学芸術学研究室勤務後、イタリア・ラヴェンナに渡りモ ザイク工房ココ モザイコにてアリアンナ・ガッロに師事。 工房ではモザイク技術の習得と同時に日本からのモザイク研修などをプ ロデュースする。帰国後は東京でモザイク工房モザイコカンポをオープン。 銀座・エコールプランタンや、イタリア語語学学校等でモザイク教室を 開講、美術館や大学でのワークショップも随時開催。
モザイコ カンポ/Mosaico Campo(東京)http://www.mosaicocampo.com/
ココ モザイコ/Koko Mosaico(イタリア ラヴェン ナ)http://www.kokomosaico.com/

vol.16 道具の話

 

毎年8月のおわり頃、茨城県の常磐大学というところで「芸術の世界」という授業を担当しています。1時間目にモザイクの歴史(紀元前4000年から現代まで!)を画像資料で説明し、2時間目から5時間目約20センチ角のローマ時代の大理石モザイクのレプリカを完成させるという、超体育会系スケジュール。今年は実習室の冷房が故障しているというオマケ付きで、まさに灼熱のモザイクキャンプとなりました。

 

モザイク制作にはいろんなステップがあります。図柄を決め、下絵をトレースして、転写して、石を割って、並べて、埋め込んで…授業ではこれらすべてを1日に詰め込むのですが、なかでも一番時間をとるのが、石を割る作業。道具の使い方、力の入れ方、それに石の性質などさまざまな要素がピタリと合わないと、なかなか思い通りに割れるものではありません。それでも、最初はおっかなびっくりの学生たちが、ほんの1時間もすると、「ぐぐぐと力を入れるより、一瞬のほうが綺麗に割れる気がする」「色が混ざっている所は崩れやすい! 混ざっていない部分を探さなきゃ…」なんて、大理石としっかり対話出来ているのです。お見事、若人。

 

手つきも頼もしく

手つきも頼もしく

 

 

今日は、そんな石割りの道具をご紹介します。

 

石割りの道具の中でも特に大切なのは、たったの3つです。もちろん、巨大石切りマシンがあったら幸せですし、カッターやサンダーだって使います。でも、これからご紹介する3つの道具が基本。これらでどんなサイズのテッセラ(石片)でも作れるんです。

 

いろんなサイズのテッセラ

いろんなサイズのテッセラ

 

イタリアで最も有名な大理石採掘地、カッラーラ出身の白大理石のテッセラたち。ミケランジェロも愛した大理石で、ダビデ像もこの石なんですよ。割りやすい、素直な大理石です。

 

◇道具その1 マルテリーナ
  初めてその単語を聞いたとき、おてんば少女を連想しました。マルテリーナ、響きが可愛い。マルテッリーナとも。イタリア語の綴りはmartellina。martello(マルテッロ=ハンマー)の小さい版という意味で、石工用のハンマーを指します。

 

これが、彼女のお姿

 

右:450g 左:900〜950g 

右:450g 左:900〜950g

 

金槌の両方が尖っている、日本のホームセンターのハンマーコーナーにはちょっと無いタイプです。この子を振り下ろして大理石を割ります。右が基本サイズで、左はヘッド部分が重いタイプ。重いほうは分厚い石や硬い石を割る時に使います。

 

ヘッド部分のアップ
ヘッド部分のアップ
ズマルトやガラス用のマルテリーナ
ズマルトやガラス用
のマルテリーナ
ズマルトやガラスを砕かずにカットするための刃がついている
ズマルトやガラスを砕かずにカットするための刃がついている

 

◇道具その2 タリオーロ
  マルテリーナと対をなすのが、タリオーロ。日本語訳だと「たがね」。モザイクの場合は割り台とでも言いましょうか。綴りは、tagliolo。taglio(ターリオ)が切断やカットという意味の名詞で、tagliare(タリアーレ)が切る、切り取るという意味の動詞。身近な所だと、tagliatelle(タリアテッレ=きしめん状の平たいパスタ)なんかも同じ系統の単語ですね。

 

美しいかたち。キリッとしています。
美しいかたち。キリッとしています。
丸太などに固定します。石を割る度に少しずつ沈むので全くぐらつかない
丸太などに固定します。石を割る度に少しずつ沈むので全くぐらつかない

 

このタリオーロの上に石をあてがって、マルテリーナで叩いて割るのです。かなり分厚い石からでも、かなり小さな欠片からでも、この二つの道具でテッセラを作ることが出来ます。(割り方は、コラム第7回「モザイクの素材たち」内で、写真にてご紹介しております)

 

◇道具その3 テナーリエ
  そして最後に、とってもフットワークの軽いこの道具をご紹介します。

 

 テナーリエ!このオレンジが頼もしいのです

テナーリエ! このオレンジが頼もしいのです

 

マルテリーナやタリオーロに比べて、圧倒的に持ち運びがしやすいテナーリエは、ニッパーのように石やズマルトを挟んでカットする道具です。綴りはtenaglie。硬い石を割るには少し握力が必要ですが、コツさえつかめば強い味方! 特に微調整には便利です。

 

 

なかなか日本では手に入りにくい道具もありますが、これらがモザイクのスタメン道具たち。スタメンが揃えば、そこはもう工房です。どんなモザイクでも作れるでしょう。これらの道具は、イタリアに行くたびにお気に入りの金物屋さんで少しずつ買い足しています。

 

最初は言葉も満足に喋れず、道具の名前もわからないので、紙に絵をかいたものを握りしめてお店に持って行ったり、間違って、大理石用よりも高価なズマルト用マルテリーナを購入してしまったりしたのも、今となっては甘酸っぱい思い出です。

 

 お世話になっているラヴェンナの金物屋さんの外観。外からは想像出来ないくらい広いです

お世話になっているラヴェンナの金物屋さんの外観。
外からは想像出来ないくらい広いです

 

 

 

 

 

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