イタリア、ラヴェンナの悠久の時間を感じながら・・・モザイク散歩

京都造形芸術大学芸術学研究室勤務後、イタリア・ラヴェンナに渡りモ ザイク工房ココ モザイコにてアリアンナ・ガッロに師事。 工房ではモザイク技術の習得と同時に日本からのモザイク研修などをプ ロデュースする。帰国後は東京でモザイク工房モザイコカンポをオープン。 銀座・エコールプランタンや、イタリア語語学学校等でモザイク教室を 開講、美術館や大学でのワークショップも随時開催。
モザイコ カンポ/Mosaico Campo(東京)http://www.mosaicocampo.com/
ココ モザイコ/Koko Mosaico(イタリア ラヴェン ナ)http://www.kokomosaico.com/


 

 

イタリア北東部、エミリア=ロマーニャ州。州の東端、アドリア海に面するラヴェンナ県の県都、ラヴェンナ。モザイク旅日記もとうとうモザイクの首都に到着です。



「モザイクの首都」と華やかに呼ばれても、実際のラヴェンナは人口15万人ほどの静かな地方都市です。その中心に位置するCentro Storico(歴史保存地区)も、数時間でぐるりと回ってしまえるほどの広さ。しかし、その狭い範囲内に世界遺産に指定されたモザイクが数多く存在しています。今回は、数あるラヴェンナの世界遺産モザイクの中から、サンタポリナーレ ヌオーヴォ聖堂をご紹介します。



サンタポリナーレ ヌオーヴォ聖堂(Basilica di Sant'Apollinare Nuovo)は、ラヴェンナ鉄道駅から徒歩5〜6分。Via di Roma(ローマ通り)沿いにあります。建設されたのは5世紀、東ゴートの王テオドリックによって。聖堂を取り囲む情勢の変化や劣化の為に幾度も修復を重ねてはいますが、全体として保存状態は良く、今でも建設当時のモザイクを見られる貴重な聖堂です。


nuovo全体

nuovo全体

様々なモザイクで彩られた聖堂ですが、特に有名なのが、殉教者の列です。正面向かって左側には女性の殉教者、右側には男性の殉教者。


左側。女性の殉教者たち
左側。女性の殉教者たち
きらびやかな衣装をまとった聖女達。一人一人の顔つきに個性が
きらびやかな衣装をまとった聖女達。一人一人の顔つきに個性が
右側の聖人達。顔はもちろん手の表現などが見所
右側の聖人達。顔はもちろん手の表現などが見所

いずれも地面の緑と背景の金。鮮やかで繊細で、ラヴェンナらしい空間表現です。


素晴らしい人物表現の他にも見るべきポイントはたくさん。例えば建物。男女の殉教者の列は、それぞれこんな素敵な建物モザイクからスタートしているのです。


男性側は、豪華な宮殿から。本来はテオドリック王の宮殿として表現されたものだと言われていますが、東ゴートから東ローマ帝国の所属になった際にその痕跡は消されてしまいました。


女性側は、建設当時のラヴェンナの繁栄のもと、クラッセ港。最近の研究で、この金の美しい城壁には人物が描かれていた事が分かりました。その後、何らかの理由でテッセラを剥がされ、金で埋め尽くされてしまったようです。やはりテオドリック王や、王が信仰し、その後異端とされたキリスト教アリウス派に縁ある人物像だったのでしょう。


宮殿。カーテンの表現がとっても素敵
宮殿。カーテンの表現がとっても素敵
クラッセ港
クラッセ港

また、衣装にも注目です。聖女の列の先頭には、貢ぎ物を捧げる3人の人物、いわゆる「東方三博士」が描かれています。完璧にオリジナルではなく、かなり修復が入っているとは言われていますが、それにしても衣装や小物が素敵。


攻めのファッション、見習いたい

攻めのファッション、見習いたい

ヒョウ柄スパッツに、襟元の刺繍が見事な色とりどりのマント…イエスに捧げる黄金・乳香・没薬もなんておシャレな容器に入っている事でしょう。。



以上は、いわば見所紹介です。
さて。サンタポリナーレ ヌオーヴォのモザイクの魅力はそれだけではありません。何故なら、ズマルトや金で作られたモザイクは煌めいているから。モザイクが施されている面だけで完結するのではなく、建物の構造、光源の位置、微妙に角度を付けたテッセラが生み出す光と陰、そしてそれを見上げる人間が居る空間を含めて、モザイク。十数年前、初めてラヴェンナを訪れ、聖堂で感じた事です。


もちろん、それ訪以前も、美術や世界史の教科書でラヴェンナのモザイクの写真を見た事はありました。特にビザンティンのくだりでは、ラヴェンナのモザイクは高確率で登場しますね。しかし往々にして教科書に載る写真は、資料的な役割を果たすため、しっかり正面からばっちり照明をあてて撮影したもの。モザイクの醍醐味部分がぽっかり抜けているのです。例えば、この聖女の列を見てください。少し斜めから見ると、このような姿に。


連続する窓、アーチに挟まれた聖女達

連続する窓、アーチに挟まれた聖女達

黄金の背景は強く、ズマルトのテッセラも微かながら確かに光を反射します。一歩進むごとに煌めき、たとえその場を動かなくても太陽の動きとともに刻一刻とその表情を変えるのです。これが、モザイク。一瞬たりとも気が抜けない、緊張感溢れる舞台を見ているかのような…これぞ醍醐味。



最後に、私がラヴェンナの聖堂に行って、特に見とれる窓のアーチ部分をご紹介します。より光を美しく見せるのを競い合うかのように、さまざまな幾何学模様モザイクが施されているんです。時に、光そのものを図案で表現していたり。サンタポリナーレ ヌオーヴォ聖堂の窓アーチも本当に見事。ぜひ一度、現地でモザイクを見て…いえ、「体験」していただきたいです。


サンタポリナーレ ヌオーヴォ聖堂の窓アーチ
サンタポリナーレ ヌオーヴォ聖堂の窓アーチ
サンタポリナーレ ヌオーヴォ聖堂の窓アーチ
 
 
 
 

 

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