歯磨き剤の要注意物質について

あごのニキビ、うっとうしくて、つらいですね。鏡を見るのも嫌になりますね。症状や年齢、生活環境など何もわからないので、一般的なことしかお伝えできませんが、必ず治る、よくなると信じて、後述の「ニキビ対策の基本」をしっかり試してください。

 

ニキビはホルモン・細菌・皮脂の相互作用によって起こる炎症です。そのため、皮脂が多く分泌される顔、背中などにでき、皮脂を分泌する毛穴が詰まるところから始まります。詰まった毛穴の中に乾いた皮脂や角質(死んだ細胞)がたまり、皮膚常在菌のアクネ桿菌などが皮脂を栄養として過剰に増殖し、炎症が起こります。さらに進行すると、皮膚の深い部分を傷つけ、治っても痕(あばた)が残る場合もあります。けれども、ニキビのできるメカニズムは完全には解明されていないといわれています。

 

4?5年前ですが、若い友人が顔のいたるところにできたニキビに悩んでいました。食べ物にも気をつけ、薬も使い、化粧品も変えて、あらゆることを試しましたが治りません。それどころか、薬の副作用で顔が赤く腫れ上がるようになり、つらくて誰にも会いたくない気持ちで引きこもりました。今はすっかり治り、ツヤツヤピカピカの肌になっていますが、その時のことを思い出してみると、「最大の敵は、やはりストレスだった!」とのこと。繊細なやさしい心を持つ人ほど、ストレスに弱いかもしれませんが、そのやさしさは大切な「あなたらしさ」。自信を持ってくださいね。また、悪いことだけがストレスの原因ではありません。引っ越し、進学、就職、結婚、親しい方との別れなど環境の変化も、ストレスの原因となるので要注意です。

 

ニキビを悪化させる原因として、ストレス以外にも化粧品、チョコレートやスナック菓子など脂肪分や油分、糖類の過剰摂取、睡眠不足などが指摘されています。ニキビを悪化させないために、次の四つのニキビ対策の基本を実践してみてください。

 

ニキビ対策の基本

?ストレスが何かを見極めて遠ざかること
?穀物と野菜中心の食事
?ふだんの肌ケア(洗顔、化粧品など)
?薬や治療

 

?ストレス対策ですが、運動、新しい習い事、読書、映画・演劇鑑賞などはおすすめです。我を忘れて楽しみましょう。嫌なことから遠ざかり、楽しいことをするのが基本です。

 

?食事は、玄米や雑穀米と、野菜たっぷりスープか(レシピを参考にしてください)味噌汁。おかずは豆腐や納豆など大豆製品が効果的です。

 

?肌ケアは、1日に1?2回石けんで洗い、無添加の手づくり化粧水をつける。洗顔は普通の石けんで十分です。抗菌石けんやスクラブ入りは、むしろ有用な皮膚常在菌を過剰に洗い流し、皮膚を刺激し悪化させるおそれがあります。化粧水以外は、できれば症状が落ち着くまでは何も使わないほうがいいでしょう。とりわけ油分の多いリキッドファンデーションなどは要注意です。どうしても使う必要があるときは、粉や固形ファンデーションと口紅程度にしてください。

 

?薬や治療についてですが、テレビで盛んに宣伝しているニキビケア商品は、洗顔剤、化粧水、クリームなどがセットで価格もかなり高め。これらの商品の有効成分は、サリチル酸やパルミチン酸レチノールなど。こうした薬用化粧品は、薬事法で効能にニキビを治す、抑えるなどの表現を使うことは禁止され、「防ぐ」以外は認められていません。さもよさそうに植物エキス配合を謳う商品もありますが、植物エキスの効果は保湿のみ。ニキビには関係しません。

 

ひどいニキビに悩むなら、私なら化粧品を探すより病院へ行きます。化粧品では配合できない薬剤を、症状に合わせて処方してもらえると思います。

 

歯磨き剤の要注意物質について

歯磨き剤への質問を多くいただいています。「虫歯をしっかり予防」「歯周病によるハレ・出血を防ぐ」「ヤニを落とし、歯を白くする」という宣伝文句にひかれ、毎食後に使う人もいると思います。しかしマイナスの情報については、あまり目にしないかもしれません。

 

 

歯磨き剤には、研磨剤、発泡剤、保湿剤、結合剤、また薬効成分などが配合されています。表1「歯磨き剤の成分」と表2「練り歯磨きの処方例」を見ると、水以外は化学物質でつくられていることがわかります。歯磨き剤にいちばん多く含まれているのは研磨剤です。これが粉歯磨きになると、研磨剤は70?95%と増えます。また、ほんの少量が配合されている薬効成分ですが、歯磨き剤はほとんどが医薬部外品ですから、医薬品とは異なり、「治す効果」はありません。あくまでも「○○を防ぐ」だけ。つまり、「虫歯や歯周病を予防」できても「虫歯や歯周病を治す」ことはできません。

 

人への害がある成分についてですが、アレルギーは歯磨き剤でももちろん起きます。くしゃみはその症状とも考えられます。別の歯磨き剤を使ったほうがいいでしょう。アレルギーを起こした、あるいは起こす可能性がある化学物質については、表3「歯磨き剤の要注意物質」にまとめました。アレルギーを起こしやすい人は、しっかりチェックしてください。これらの成分は、2001年の薬事法の改正で全成分表示が実施されるまでにも指定成分として表示が義務付けられていたものです。とりわけ口の中に炎症が起きているときは危険です。合成界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムは、発ガン性や口内炎を起こすなどの毒性は否定されていますが、さまざまな化学物質を体内に入りやすくします。アレルギーも起きやすくなりますから、要注意です。

 

薬効成分のフッ素化合物(注1)ですが、現在日本では虫歯を予防できるとして、かなり多くの歯磨き剤に薬効成分として添加されています。このフッ素化合物の使用については賛否両論があり、国によっても対応が違います。アメリカや韓国では水道水に入っていますし、ヨーロッパでも一部の地域で使用しているところがありますが、大半の国では中止されています。

 

フッ素化合物を配合すると、歯の象牙質にフッ素が取り込まれ、酸に対してカルシウムの流出が抑制されることがわかっています。つまり、歯質を強くし、虫歯予防に期待ができます。しかし一方で、人によっては過敏症が起きる、嘔吐や腹痛、下痢をするなどの副作用が報告されています。さらに、歯の表面のエナメル質の形成不全で歯が欠けて、そこに食べ物の色素がついて茶色くなる斑状歯という症状を起こすことも報告されています。

 

フッ素化合物は塩素化合物と同じ仲間で、化学物質の中でも反応性の高い物質です。日本では、フッ素入りの洗口液は医薬品で普通の薬局では買えませんし(注2)、水道水へのフッ素添加も行われていません。「君子危うきに近寄らず」。危険性が指摘されているものは避けたほうが無難です。安全性が確かめられてから使えばいいのです。

 

歯医者に行くと、歯科衛生士の方が歯磨きの指導をしてくれますが、「歯磨き剤は使わないでください」と言われます。虫歯や歯周病にとっていちばん大切なブラッシングをしっかり時間をかけてする必要があるのに、歯磨き剤を使うと、口の中が泡だらけになって短時間で終わらせてしまうからです。ただ、歯磨き剤を使わないと歯が茶色くなることが指摘されています。そこで、私は1週間に1、2度ブラッシングの後で歯磨き剤を使います。歯磨き剤は、要注意物質が使われていない石けん系の歯磨き剤を使っています。また虫歯予防は、食べた時にはすぐ口をすすぐか歯を磨くことと、正しい食生活をすることで十分に可能です。

 

注1: フッ化ナトリウム、モノフロリン酸ナトリウム、フッ化スズなど。虫歯予防の目的で配合される。現在市販されている歯磨き剤のうち、フッ素化合物が含まれる歯磨き剤のシェアは89%(2008年)。薬事法により、フッ化物イオン濃度は1000ppm以下に規制されていて、市販の濃度は、900ppmから950ppmである。

 

注2: 欧米諸国では、フッ素化合物入りの洗口液が医薬品ではないので、普通に買うことができる。

 

先日も大阪に向かう機内で、お母さんと同じマニキュアをした2歳の男の子を見かけました。ネイルアートというのでしょうか、爪にはかわいい模様がありました。ペディキュア(足の爪にする)の子や、髪の毛を赤や黄色に染めている幼い子どもも見かけますね。洋服では表現できないおしゃれをしたい気持ち、今の時代の風というか、空気なのでしょうか。その気持ちもわからないではないのですが、ちょっと待って。化粧品は化学物質。幼い子どもには危険性があるものだということを頭に入れておく必要があります。

 

そこで子どもの化粧や染毛の問題について、東京都が行った調査を簡単にまとめてみました。

 

�子ども用と大人用化粧品の成分に違いはない。

子ども用だからといって原料に配慮がされているわけではありません。保存料や、発ガン性が疑われる酸化防止剤やタール色素も使われています。玩具売り場で販売されているものももちろん同じです(注1)。ただし、子ども用のマニキュアの場合は、水で洗い流せるものや手ではがせるものなどがあります。

 

�表示や注意書きが不十分

子ども用化粧品は、対象年齢・保管方法・異常があった場合の対応などについて記載されていないものが多くありました。さらに、「これは子ども用化粧品です。必ず保護者の監視の下で使用させてください」という表示や、乳幼児の誤飲についての注意もほとんどない商品が多くありました。

 

�手軽な口紅から毛染めまで

12歳以下の女の子の中で化粧経験者は45%で、七五三などの行事以外に「時々化粧をする」という回答が29名(化粧経験者の10%)でした(注2)。化粧は、「おしゃれ」として外出時に行っていて、購入した商品は口紅が最多でした。

 

また、47名(4%)の子どもが毛染めの経験があり、年齢はゼロ歳から4?5歳児がピークで、就学前に経験する子どもが30名(63%)で、「時々染めている」とした子どもが19名(40%)でした。

 

�トラブルも発生

化粧経験者の子どものうち、6名は皮膚障害のトラブルを経験していました。

 

 

この報告書ですが、親が最初に子どもの髪の毛を染めた理由に「自分の毛染め剤が残った」というものがありました。思わずニヤリ、さすが主婦。「もったいない」のたくましさを感じるわけですが、気軽に、何気なく化粧品を子どもに使っている日常が見えてきます。多分、そうした人はそれまでも化粧品でかぶれたり、発疹がでたりするような被害にあってこなかった幸せな人なのでしょう。しかし、子どもの肌と大人の肌は違うのです。

 

皮膚の専門家は「子どもと大人の肌はまったく違う。皮脂の分泌、水分保持力、新陳代謝が異なり、まわりの環境、たとえば乾燥などについての皮膚の対応が大人とは違う。大人より総じて弱いといえる。またアトピー性皮膚炎や乾燥肌の子どもの皮膚は水分保持力が弱く、要注意だ」と話しています。また「子どもが大人と同じような化粧品を使えば、皮膚障害などのトラブルが起こる可能性が高い。メイクを落とす時も問題だ。洗浄剤による皮脂の落とし過ぎなどのトラブルが起きる」と言うのです。

 

大人と同じように毛染めやマニキュア、メイクをするのは皮膚障害の危険性がとても高いわけです。そこで化粧品の成分で問題があるものを取り出してみました(表1・2)。

 

子どもの肌、爪、髪の毛は、神様からの贈り物。そのままで、十分に美しい輝きがあります。それをわざわざ隠すなんて、もったいない!その幸せを分かち合うことが大切と思えます。

 

注1: 化粧品とは異なり、医薬品の場合は、子どもと大人とでは用量を変えている。また、小児用かぜ薬にはカフェインやエフェドリンなどを入れない商品が販売されている。

 

注2: 東京都が行ったアンケート調査(有効回答数1146通、12歳以下の子どもを持つ親が回答)の結果。参考文献)東京都生活文化局消費生活部『平成18年度調査報告書 化粧品類の安全性に関する調査』(平成19年3月)

 

つけ爪によるトラブル

 キュートでおしゃれな「つけ爪」。気分やコーディネートに合わせて人工の爪を接着剤などで爪に張り付けるのが流行しています。しかし、かぶれ、カビの感染、火傷など、思いもかけないトラブルが起きています(注1)

 

 � ネイルサロンでつけ爪をした。通常の半分以下の値段だったが、施術中にうまくいかず何度もやり直した。その上、翌日からはがれ始めるなど満足のいかない出来であった。つけ爪が肉に食い込み、血豆状になった箇所もある。苦情を伝えたが、無視されている。(10代)

 � ネイルショップでつけ爪をした。2日後から左手の中指が腫れだし化膿した。(40代)

 � 勤務していたネイルサロンの衛生管理が悪く、バクテリアの繁殖で客の爪が黒くなった。自分も施術をしたところ爪が緑色になり、次に黒くなった。(20代)

 � 爪用の瞬間接着剤の蓋を開けたら飛散し、じゅうたんから白煙があがった。はいていたジーパンの右太ももに痛みを感じたので、見ると皮膚がただれていて、病院で熱傷2?3度(注2)と診断された。

 

 �のように自宅で行った施術でも、さまざまな被害が起きています。また、つけ爪をはがす液で左手の指先から指の間がただれ、痛みで手が強張り、開きにくくなった人もいます。

 

こうした被害で見えてくる問題点をまとめてみました。

つけ爪の問題点

 � ネイルサロンでの施術については、技術者の未熟・衛生管理の不備が指摘されています。開業や施術に規制がないので、一定の水準を期待することはできません。一方、アメリカでは、ネイル製品については家庭用・サロン用ともに、連邦医薬品化粧品法の適用を受け、施術者もライセンスが必要となっています。

 � 日本では、つけ爪の材料や用具の成分、注意の表示が、法律で義務付けられていません。

 

 つけ爪用の接着剤は瞬間接着剤と同じ、シアノアクリレート系接着剤が多く、この接着剤は皮膚につくと取れなくなり、火傷を起こすことがわかっています。プライマー(注3)やリムーバー(つけ爪を取り除く液)も皮膚がかぶれたり、化学火傷を起こすなど作用の強いものがあり、さらに引火の危険性もあります(表1)。しかしこうした危険性は、わかりやすく表示されていません。

 

つまり「つけ爪」は、爪をやすりで削り、化学物質を大量に塗ってつけるもの。つけた爪をはがすのにも、溶剤で接着剤を溶かすので、爪に負担がかかる施術です。何度も施術を繰り返していると、爪は薄くなり、もろくなることもあります。

爪の健康のために

 爪は、皮膚の角質層が変化したもので、毛髪と同じタンパク質のケラチンでできています。固い爪も、皮膚や毛髪のように、日々細胞分裂して成長し生きています。

 

 爪の水分量は7?12%、脂肪は0・15?0・76%、このわずかな水分や脂肪が化学物質によって日々取り除かれると、さまざまな症状がでてしまいます。

 

 爪は健康のバロメーター。健康な爪は、美しい桃赤色です。低色素性貧血の人は蒼白、血流が悪い人、心臓や肺疾患の人は青紫色となりますし、白癬菌によって爪が侵されると白濁します。ですから、つけ爪によって健康状態が判断しにくい状態になることも考えておきましょう。

 

それでもつけ爪をする場合は、次のことに注意してください。

 � 甘皮は爪をつくる部分を保護する皮。それを取り過ぎると爪がデコボコする、ささくれる、細菌が入って炎症を起こすなどの危険性があります。

 � つけ爪と自分の爪の間に隙間が生じると、そこから細菌に感染する危険性があります。爪が白く濁る、黄色・緑色への変色・凹凸や肥厚などの変形は要注意です。

 � 柔軟性を謳うつけ爪は、その柔軟性が災いし、接着部がはがれず、自分の爪も損傷してしまう場合があります。

 � サロンでの施術は、NPO法人日本ネイリスト協会によって資格認定が行われているので、参考にしたほうがいいでしょう。

 

注1: つけ爪による危害︱かぶれ、やけど、カビが生えることも」独立行政法人国民生活センター(平成20年10月16日) http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20081016_1.pdf

 

注2: 熱傷は1度?3度に分けられている。2?3度だと、皮膚は壊死を起こし、神経も侵されるので痛みを感じないこともある。治療に3週間以上かかり、火傷の痕が残る。

 

注3: 爪の下塗り剤のこと。つけ爪をのせる前に、少量を塗布して浮きを防ぐ。

 

 

肌に効くサプリメント

 確かにサプリメントは「美人度アップ」「ハリとうるおい」などと宣伝されています。「内外美容:体の外側・内側の両面から働きかけ、より健やかに美しくする」などと、化粧品メーカーもサプリメントの販売に力を入れています。肌の老化やトラブルに悩む人が「化粧品だけでなくサプリメントも」と思うのも無理はありません。

 

 しかしいちばん大切なポイントは、サプリメントは食品であり、医薬品ではないことです。錠剤や粉末、ドリンク剤など、医薬品とほとんど変わらない形状なので錯覚しがちですが、あくまでも食事で足りない栄養を補うための補助食品。「しわを取る」「肌荒れに効く」「ニキビを治す」「きめを細かくする」効果はないし、効果をうたうことも薬事法で厳しく制限されています(注1)。

 

 「ええっ、効果が宣伝されていますよ」と思う人がいるかもしれませんが、そのチラシ、その雑誌をよく見てください。「ハリとうるおいのあふれる毎日」「みずみずしさとハリのある美しさをめざす方におすすめ」「はずむような美しさ」「若々しさへと働き」などと書かれているだけ。しわや肌荒れに効く、若くなるとは書かれていません。あなたが勝手に効くと思い込んでいるだけ。メーカーはそのように思い込ませるような宣伝をしているわけです。

 

 たとえばサプリメントの一つ、コラーゲンを例に考えてみましょう。ハリとうるおいの美容成分、骨・関節疾患にともなう症状の緩和でおなじみの成分です。

 

 私たちの体の約20%がタンパク質ですが、その3分の1はコラーゲン。4割は皮膚に、2割は骨や軟骨に存在し、血管や腱など、ほとんどの組織に存在しています。皮膚のコラーゲンは、紫外線やオゾンなどの影響を受け、また加齢とともに質・量が変化します。10代後半にピークを迎え、その後は加齢とともに減少します。コラーゲンが不足すると、しわやたるみなどの皮膚のトラブル、関節の痛みや変形、骨の衰えなどの症状が出てきます。コラーゲンを多く含む食品としては、鶏の手羽や皮、フカヒレ、牛スジなど。皮や骨付きの肉の煮込みや豚骨スープ、魚の煮汁、ゼラチンのゼリーなどで、私たちは日常的にコラーゲンを食べています。

 

 さて、コラーゲンのサプリメントの効果ですが、独立行政法人国立健康・栄養研究所の「健康食品の安全性・有効性情報」(注2)によれば、「コラーゲンの原料となるアミノ酸やペプチドを補給することはできる」と述べられています。しかし、皮膚の状態を改善する効果については、健康な成人女性39名(20?30歳)に、コラーゲンペプチド10グラムを含む飲料を60日間摂取させたところ、皮膚の保湿能力に変化はみられませんでした。骨・関節疾患にともなう症状の緩和については、「信頼できるデータが見当たらない」と結論が出されています。しかし皮膚に塗布した場合では「外部からの刺激を緩和」「水分を保つことは可能」ではあるものの、「しわやたるみに効果があるわけではない」ようです。

 

 一方、アレルギーを誘発する可能性が示唆され、妊娠中・授乳中の安全性については十分なデータがないことから使用を避けるべきと、注意されています。

 

 そのほか、美容関連で宣伝されているサプリメントの成分には表のようなものがありますが、ほとんどのサプリメントが「有効性については信頼できるデータは見当たらない」との結論です。

 

 サプリメントは、食品と違い、大量・長期・連続に摂取してしまうことから思わぬ危険が潜んでいることも指摘されています。たとえば野草のコンフリーを含むサプリメントによる肝不全の死者、ビタミンA過剰症(吐き気、頭痛、めまい、低体重、口角亀裂、脱毛、肝肥大)、ビタミンE過剰症(下痢、腹痛、血栓塞栓症)、カルシウムなどミネラル類過剰症(幻覚、脱力、食欲不振、腎・尿路結石)などが報告されています。

 

 私なら、サプリメントは使いません。お金や買う時間がもったいないですもの。その分、肌によいごはんをつくって食べます。

 

注1 特定保健用食品(トクホ)として厚生労働省から認可を得ることで、特定の保健用途における効能を表示することが可能なものもある。ただし錠剤や粉末状のものは認可されていない。 また栄養機能食品とは、12種類のビタミンと5種類のミネラルのいずれかが一定量含まれ、その栄養素の機能を厚生労働省に届出や申請なしに表示できる食品。サプリメントは前述以外の食品を指し、効果・効能を書くと薬事法違反となる。

 

注2 http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv.html
http://www.nih.go.jp/eiken/chosa/ishimi.htm

 

 

ロングセラーの化粧品を

 新商品登場、新色発売などと、年に何回も新しい商品が繰り出される化粧品。美しいモデルさんが透明な肌をキラキラと輝かせているのを見ると、使ってみようかと思います。タダの試供品をもらえば、試してみたくなります。

 

 でも、敏感肌の私が今まで散々試してきて、かなりひどい目にもあう中で学んだ「選びの鉄則」は、「新しいものには手を出すな!」です。1年間は買うのを我慢して、1年後にも市場に出ていて魅力的なオーラを感じた場合にのみ、買っても遅くはありません。考えてみてください。今までどれほど「よさそうな」化粧品が登場してきたことか。

 

「化粧品選び三つの鉄則」
ガンガン宣伝している化粧品は買わない

 化粧品の製造は、自動車や家電などとは違い、商品単価がきわめて安いのが特徴です。原料は安価な水と化学物質。それらを混ぜ合わせる技術が必要なだけなので、大がかりな製造装置もいりません。したがって、大規模な工場をつくる必要もありません。だから、ほかの業界よりも広告宣伝やデザインにお金をかけられます。メーカーにしてみれば宣伝しないと売れないので、宣伝に大金をかけ、値段に反映される悪循環。

 

 多くの人が自分に合ったものを末永く使い続ける姿勢が、長い目で見れば、宣伝費を抑えて、質のよい化粧品を安価に手に入れることにつながるのです。

 

流行は追わない

 それまでの流行を振り返ってみましょう。厚生労働省は、医薬部外品も含めて、化粧品の効果(肌を白くする、シミをとる、シワをのばす)を認めていませんし、効果の宣伝も厳しく規制しています。だから、ブームが起こること自体が変ではないかと思えます。化粧品では、顔を小さくできないし、顔の色は白くならないし、シワは取れません。

 

●小顔化粧品:歌手の安室奈美恵さんがミリオンセラーを連発していた、1997年頃に流行しました。カフェイン成分に「肌の引き締め効果」があると宣伝し、デパートの売り場には「小顔になった」使用前・使用後の写真まで張られました。

 

●プラセンタエキス:美白効果があるとされ、高濃度のものが販売されるなど、メーカーが競って配合し、効果をうたいました。2001年にBSEとの関連で牛の胎盤などの使用が禁止され、大量の化粧品が回収されました。以後、原料が豚の胎盤になってからは下火です。

 

●Q10化粧品:体内でも合成されているビタミン様物質、コエンザイムQ10。2004年に化粧品の原料やサプリメントとしての使用が許可され、細胞を活性化する、シワを浅くするなどと宣伝されています。

 

 もともとは、うっ血性心不全治療に対する有効性があるとされ、医薬品として用いられてきました。しかし最近になって、有効とされたデータは被験者数が少なく観察期間も短いと否定され、大規模な無作為比較試験ではその有効性は示されていません。

 

 とはいえ、オーガニックに携わるメーカーさんには、過激な宣伝、過剰な効能書き、ウソの表示はやめてほしいと強く願います。たとえば「100%ノンケミカル」「100%天然・自然」などの表示はいかがなものでしょうか。自然のものなら変色もするし、長期の保存もできません。消費者が望んでいるのは、そういうことではないと思えます。保存料が入っているものと入っていないものを選べる自由、安定性がある化粧水……などであると思います。

 

新成分配合には手を出さない

 ●ナノ化粧品:10億分の1メートルレベルの微細なナノ粒子が用いられた化粧品が「浸透しやすい」「すき間なく紫外線をカット」などとして配合されています。

 

 実は、化粧品中のナノ粒子は、肌に浸透するという証拠はないので安全とされてきましたが、欧米でナノ化粧品についての懸念が広がり始めています。日焼け止めに配合される酸化チタンや酸化亜鉛の微粒子が、肌を通り過ぎて体内へ浸透する疑いがでてきたのです。妊娠マウスの胎盤を通過して仔マウスの脳を損傷する、オスの仔マウスの精子数の減少などを起こす、肺の毛細血管が詰まる、脳に蓄積する、免疫細胞に取り込まれて細胞を異常に活性化するなどの疑いが指摘されています。今後、OECD(経済協力開発機構)でナノ化粧品の評価を行い、アメリカのNTPという毒性評価専門機関、厚生労働省でも数年内の結論をめどにデータを収集していくようですが、安全性を確認してから販売して欲しいですよね。私は「ナノ」とあるだけで、買わないようにしています。

 

 あまり知られていないようですが、実は老舗のメーカーには数十年の歳月を生き抜いたロングセラーの化粧品が必ずあります。たくさんの人が実際に使ってみてよかったからこそ、生き延びてきた商品です。とりわけ敏感肌の方には、宣伝や流行に惑わされず、新商品よりも、こうした、いわゆる「人体実験済み商品」こそ、試してみて欲しいと思います。

 

 

オーガニックを選ぶのはなぜ

 日本の化粧品業界は、真っ赤な着色料と人工香料で「ナチュラル」「バラの香り」などと宣伝し、いかがわしい「ナチュラル」ばやりの昨今ですが、オーガニックコスメは違います。

 

 オーガニックとは、農薬や化学肥料を使わない有機栽培のことで、有機栽培の植物でつくられているほかに、遺伝子組み換え成分は使わない、動物実験は行わない、容器はリサイクルするなどと、厳しい認定基準がもうけられています。

 

 たとえばドイツでは、ドイツ医薬品・化粧品商工業企業連盟(BDIH)に所属する、自社製品の「ナチュラル」さに自信のあるメーカーが中心となり、2000年に認定基準がつくられました。認定されているメーカーには「ロゴナ」「ファファラ」「アンネリンド」などがあります。その基準は表1のように厳しいものです。

 

 メーカーは、書類や製品を中立の試験機関に送り、検査や調査の後、BDIHマークを取得し、商品などに表示することが許されます。このような認証機関は、ほかにもSOIL ASSOCIATION(英国)、ECOCERT(EU)、ACO(オーストラリア)、OCIA(米国)などがあります。それぞれの基準で認可された化粧品は、ヨーロッパを中心に多種類あります。厳しい認定基準がなかった日本でも、ようやく認証を考えるところが出始めたようです。

 

 ただし、こうしたオーガニックコスメでもアレルギーを起こす可能性はあります。自分に合うか合わないかは、肌と相談して決めるしかありません。

 

 オーガニック」は、今を生きる私たちが最も真剣に取り組まなければならない課題であると思います。私は長男が「突然変異による血液の病気」と診断されて以来、病弱な子どもを育てるために農薬を使わない作物を求め続け、ついには自ら田畑を耕すようになりました。また田畑に通ううちに農薬の空中散布の実態を知り、環境問題にも強い関心を持つようになりました。便利さ、安さなどのために、あまりに安易に化学的な薬品に頼りすぎてきた農業や工業により、水生生物や植物、昆虫、鳥類などに大きな被害が出ていることに深く心を痛めています。

 

  ものが言えない、書けない小さな命にとって、どうしても必要なものがオーガニック。もっと多くの人がオーガニックを求めていく必要があり、メーカーはこうした分野の商品ならば売れるとして、オーガニックへの関心を社会全体で共有していくことが大切だと思っています。

 

  人工的な化学物質だらけの他の商品と比べて、オーガニックコスメは、使用した人に、「効いた」とか「肌にすごくよい」などの実感はもたらさないかもしれません。人間でその必要性が本当にわかる人は、化学物質過敏症などで苦しむごく少数ではないかと思います。こうした方々は、何がいいのか悪いのかを、身をもって教えてくれているのです。つまり危険を知らせるカナリアさんです。こうした方々の命の訴えに耳を傾けていきたいと私は考えています。

 

 オーガニックの商品が完全である必要はありません。南極や北極まで有害物質で汚染されている事実を考えると、残念ながらオーガニックといえども完全なノンケミカル・安全・安心と標榜することはできない時代。ですから、完璧さを要求すべきではなく、現状で、できる限りのオーガニックを受け入れ、育てていくことが大切だと思います。

 

 とはいえ、オーガニックに携わるメーカーさんには、過激な宣伝、過剰な効能書き、ウソの表示はやめてほしいと強く願います。たとえば「100%ノンケミカル」「100%天然・自然」などの表示はいかがなものでしょうか。自然のものなら変色もするし、長期の保存もできません。消費者が望んでいるのは、そういうことではないと思えます。保存料が入っているものと入っていないものを選べる自由、安定性がある化粧水……などであると思います。

 

 「最大限の安全性に配慮した商品づくり」をモットーにつくるメーカーを、消費者が長く支え続けるのが望ましいでしょう。ただし、消費者もまだまだ未熟で、新しい商品に次々と飛びつき、「宣伝すれば売れる」のが実情です。でも私は、こうでありたい、こうしようと、言い続ける人でありたいと願っています。

 

 

化粧品にも含まれる、シックハウスの原因物質

 住まいが原因、しかも新築での体調不良ですから、二重三重につらい日々と思います。原因物質は特定されたのでしょうか。私もアレルギーを持つ身なので、あれにもこれにも、とにおいに過敏になっているお気持ち、よくわかります。でも、その過敏さがあなたの体を守っているのだと思います。

 実はご指摘の通り、化粧品にもシックハウスの原因となる物質が入っています。何に入っているのか、どこに気をつければいいのか、一緒に考えていきましょう。

 シックハウス症候群は、まだ多くの点で未解明です。厚生労働省は検討会を設置し、住宅内の空気質調査をもとに、人体に対する影響を考慮して、13種類の揮発性有機化合物の室内濃度指針値(注2)を策定しています(表1)。そのうち6種類は化粧品にも使われています。指針値のない多種類の揮発性有機化合物も、シックハウス症候群を起こす物質と指摘されていますが、そのうちの一つ、ブタノールも化粧品に配合されています。これら7種類の物質について、調べてみました。

1 ホルムアルデヒド

 強力な殺菌防腐剤。発ガン性が報告され、鼻や咽頭粘膜への刺激があります。日本では有害物質として規制されており、化粧品への配合は禁止されています(注3)しかしEUやアメリカ、カナダ、オーストラリアでは保存料として許可されています。

 したがって、それらの国で販売されるランコム、エスティ ローダー、ポールミッチェル、ヘレナ ルビンスタインなどのブランドの化粧品のマスカラ、アイシャドウ、化粧水、メイク落とし、ボディシャンプーなどにはホルムアルデヒドが使われています。海外旅行の際に免税品店で購入する製品には注意が必要なのです。

 しかし、商品の成分表示は「ホルムアルデヒド」ではなく、製造後時間が経過するとホルムアルデヒドを放出する「DMDMヒダントイン」「ジアゾリニルウレア」「イミダゾリジニルウレア」「5—ブロモ—5—ニトロ—13—ジオキサン」などです。英語、仏語などでこれらの化学物質名が表示されているので、わかりづらいと思います。

 なお、日本国内で販売されているものは、海外で販売されているものと同じブランドの商品であっても、これらホルムアルデヒドは配合されず、パラベンなどに成分変更されています。

2 トルエン

 動物実験では、ヒトに生殖・発生毒性を引き起こす可能性があることや中枢神経系への影響も報告されています。

 化粧品には、ネイルエナメルに配合されています。ネイルエナメルの皮膜剤の柔軟性や密着性を高めるためには樹脂類の配合が欠かせませんが、トルエンはこれらの樹脂の溶解力を高め、希釈するのに最適です。また、コストダウンのための増量剤としての意味もあります。さらにエナメルリムーバーにも配合されています。

3 キシレン

 動物実験の結果から、ヒトに生殖・発生毒性を引き起こす可能性があることが報告されています。妊娠ラット曝露における出生児の中枢神経系発達への影響が報告され、指針値が設けられています。

 溶剤として、ネイルエナメルやエナメルリムーバーにも配合されています。

4 テトラデカン

 刺激性および麻酔性があり、接触性皮膚炎の報告があります。またラットへの曝露による肝臓への影響が報告され、指針値が設けられています。クリームや乳液、ファンデーション、ジェル、ボディケアなどの油性原料として使用されています。

5 フタル酸ジブチル

 内分泌攪乱物質の疑いがあり、母ラット曝露における新生児の生殖器の構造異常への影響をもとに指針値が設けられています。

 可塑剤、溶剤として、ネイルエナメルの皮膜に柔軟性を与え、収縮性を抑制し、耐久性を向上させるために配合されています。

6 フタル酸ジエチルヘキシル

 ラットやマウスの動物実験で精巣萎縮、成熟精子の減少、テストステロン量の低下、骨格奇形、肝重量増加、孫世代での出生率・生存率の大幅な低下など生殖毒性が報告されています。ラット曝露における精巣への病理組織学的な影響の結果をもとに指針値が設けられています。

 フタル酸ジブチルと同様に、旧環境庁が示した「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」のリストに挙げられ、かつ、「優先してリスク評価に取り組むべき物質」にも選定されています。

 可塑剤、溶剤として、ネイルエナメルの皮膜に柔軟性を与え、収縮性を抑制し耐久性を向上させるために配合されています。また海外では、香水などからも検出されています。

7 ブタノール

 眼を刺激し、中枢神経系に影響を与え、高濃度の場合、意識低下を引き起こすことが報告されています。繰り返し、または長期の皮膚への接触により、皮膚炎を引き起こすことがあります。

 資生堂、カネボウ、ちふれ、セザンヌ、DHCなど多数のメーカーのネイルカラーに配合されています。

 

 お気づきになりましたか? これら揮発性有機化合物は、どれもにおいがあるのです。ですからにおいを感じたら、避けることができます。私もにおいの強いところへは近づかないようにして我が身を守っています。誰よりも敏感で弱いと思われている人が、実は世の中の悪いものを嗅ぎわけることができるのだと思います。

 

 

注1 シックハウス症候群は、住宅建材や家具などから発生する化学物質による倦怠感、めまい、吐き気、咳、頭痛、湿疹などの体調不良のこと。
注2 指針値とは、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値です。(13物質の用途や毒性に関する情報は表1を参照)

注3 「DMDMヒダントイン」「イミダゾリジニルウレア」は日本でもシャンプーなど洗い流すものについては使用が認められていますが、「ホルムアルデヒドに過敏な方の使用はおやめください」などの注意書きが必要なため、実際には配合されていません。
参考文献 国際化学物質安全性カード: http://www.nihs.go.jp/ICSC/index.html

 

 

危険な2剤式ヘアカラー

 私は、すべての化粧品・医薬部外品の中で、染毛剤が最も危険と考えています。体質によっては死に至るほど重篤なアレルギー症状を起こす物質が含まれているのです。しかも体内に抗体ができると、この抗体をほとんど一生持ち続けます。ですからアレルギーをたびたび起こしてきた我が身を守るため、栗色や明るい茶色の髪に憧れつつも、こうした染毛剤は使いません。

 危険がある染毛剤は、ヘアカラーやヘアダイまたは白髪染めなどと呼ばれ、2剤を混ぜて使う方式のもので、色持ちがよく、いったん染まると1?3カ月ほど持続します。薬事法上は医薬部外品に分類されます。商品の箱の中には危険性を知らせる「使用上の注意事項」が同封され、皮膚試験(パッチテスト)の実施についての記載が義務付けられています。パッチテストは、染める2日前に毎回必要と書かれています。アレルギー症状は、使用してすぐに出るとは限りません。美容院で使われているものも成分的には同じです。事前に必ずパッチテストを頼みましょう。

 2剤式染毛剤は、1剤(表1)は発色主剤や修正剤、アルカリ剤、界面活性剤など、2剤は過酸化水素水や安定剤が配合されています。アルカリ剤で染毛剤を毛髪に浸透しやすくし、過酸化水素水で毛髪のメラニン色素を脱色し、発色主剤や修正剤、アルカリ剤が化学結合して色が染まります。髪を染める黒・茶などの色調は、発色主剤と修正剤の成分の組み合わせによって決まります。たとえば発色主剤がパラフェニレンジアミンの場合、修正剤がレゾルシンなら緑褐色、カテコールなら灰褐色、α-ナフトールなら青紫色になります。

 染毛剤の成分はそれぞれにさまざまな毒性が報告されています。発色主剤のパラフェニレンジアミンは、重篤なアレルギーを起こす原因とされる上、吸入によって喘息を起こし、長期にわたると腎臓に影響を与え、腎臓障害を起こすことも報告されています。修正剤のレゾルシン、ピロガロールなどもアレルギーを起こします。アルカリ剤のアンモニア水や過酸化水素水は、眼粘膜に強い刺激を与えるので、洗い流すときは要注意です。また過酸化水素水は、20℃で気化し、吸入によって咽喉痛、咳、めまい、頭痛、吐き気などを起こします。

 また市販の染毛剤そのものは、乳ガン細胞を増殖させ、環境ホルモン作用があることが、北里大学の坂部貢教授の研究によって明らかにされています。1000億分の1に薄めた量で環境ホルモン作用を示すことを確認したというのです。

 この染毛剤は、毛髪や皮膚の角質を傷めることでも知られています。強いアルカリ性のもとで化学結合が行われるので、毛髪は損傷し、その強度は低下します。美容院で働く方や、若い女性、中高年女性の薄毛や抜け毛など、毛髪が「ボロボロ」なのは、たび重なる染毛によるものが一因と指摘されています。

子どもへの使用はやめよう

 こうした危険性が高い染毛剤を、子どもも使っていることは信じられないことです。東京都は、平成19年に「化粧品類の安全性等に関する調査」を発表し()、その結果、約4%の子ども(12歳以下、1146名中47名)に染毛の経験があり、そのうちの8割以上が染毛剤を使用していたと報告しています。

 また試買調査の結果、「幼小児には使用しない」旨の記載がない商品が35品中20品あったことから、東京都は厚生労働省に対しては「幼小児における染毛剤の使用に関して今後とも注視すること」、製造・販売事業者の団体等に対しては、「染毛剤には『幼小児には使用しない』旨の注意表示を行うこと」を提案しています。もちろん消費者には、「子どもへの染毛剤の使用は、やめましょう!」と呼びかけています。

()「平成18年度調査報告書 化粧品類の安全性等に関する調査」(東京都生活文化局消費生活部) http://www.anzen.metro.tokyo.jp/chemical/pdf/20070308cosmetics_all.pdf

安全なヘナにも注意

 私は生え際の白髪に、ヘナの葉を乾燥させ粉末にしたものを使っていますが、ヘナ100%だと黒や茶色には染まらず、明るいオレンジ色に染まります。このヘナとして販売されているものの中にもパラフェニレンジアミン入りのものがあり、重篤なアレルギーが起きています。ヘナの購入時には、「黒や茶に染まらない」、「薬品臭がしない」などを確かめてください。

 

保湿剤の真実

 肌のうるおいにとって大切なのは皮脂です。皮脂は撥水性があり、水や有害物質の滲入を防ぎます。さらに脂肪酸や乳酸が含まれるため酸性で、細菌が付着しても繁殖できません。微生物の侵入を防ぎ、ブドウ球菌、緑膿菌などから皮膚を守り、白癬菌に対しても殺菌作用があります。水虫が、皮脂の分泌が少ない足の指の間にできることからも、その殺菌力がわかると思います。しかも緩衝作用があり、アルカリ性にも酸性にも対応して皮膚を守ります。さらに水分蒸発を抑制し、角質層の水分保有力に大いに貢献しています。

 そのように大事な皮脂ですが、その分泌量は男性よりも女性のほうが少ないうえ、男性は年代を通して変わらないのに、女性は20歳前後をピークに徐々に減少していきます。また分泌量は冬よりも夏のほうが多く、脂肪や炭水化物を多く摂ると増えることがわかっています。皮脂は、表皮にある一定の厚さに広がると分泌が止まります。個人差はありますが、それにはだいたい2?4時間かかるといわれています。

 以上のことからも明らかなように、これまで病的な(治療が必要な)乾燥肌は、冬に、高齢の女性に多いのが常識でした。

 ところが最近は、夏なのに、若いのに、病的な乾燥肌が皮膚科医から報告されています。立ったままシャンプーをし、そのままシャワーで洗い流すことで強力な脱脂力をもつ界面活性剤が全身に付着し、それが乾燥肌の一因になっていると指摘されています。そんなことをしていたら、どんな保湿剤も役に立ちません。保湿の前に、脱脂力の強いシャンプーや洗顔剤などを使っていないか、まずは身のまわりのものを見直す必要があるでしょう。  乾燥肌は、皮膚にとって大切な皮脂がない状態。つまりありとあらゆる危険から無防備な状態なのです。しかも、皮脂の最も大切な働き、微生物と闘う免疫力などは、クリームや保湿剤では補うことができないことも考えて、日々過ごしたいものです。

保湿成分は肌から吸収されるのか

 さて、「肌にうるおいを与え、乾燥を防ぎます」と宣伝されている保湿剤ですが、主としてポリエチレングリコールなどの多価アルコール・尿素・乳酸塩・ピロリドンカルボン酸塩・ヒアルロン酸など。最近は植物性のエキス類も増えています。お手持ちの化粧品の表示をお確かめください。

 では、それらの成分は皮膚へ浸透するのでしょうか。テレビや雑誌で繰り返される宣伝では、あたかも皮膚の中まで入り込むような思いにさせられます。しかし実際は皮膚の最も外側の角質層に広がるだけ。

 そうした事実を逸脱した表現がまかり通っているため、業界団体の日本化粧品工業会では、2008年「化粧品等の適正広告ガイドライン」をつくりました。「細胞分裂がほとんど行われていない表皮の角質層や毛髪部分へ化粧品成分が浸透する表現を行う場合は、浸透する部位が『角質層』や『毛髪』の範囲内であることを併記すること。浸透して損傷部分が回復(治療的)する等の化粧品の効能効果の範囲を逸脱する表現は行わない」としています(表1)。  広告に惑わされず、以下の「スキンケア」を参考にしてください。

大切な皮脂を守る「スキンケア」

乾燥肌にならないため、なったら治すための「スキンケア」です。
1. 洗い過ぎない。脱脂力が強いシャンプー液は皮膚に付かないようにする。
2. 脂肪や炭水化物を多めに摂るなど、食生活に気をつける。玄米などの精白していない穀物や豆は、おすすめ。
3. パウダーファンデーションなど粉系の化粧品は吸湿性が強いため、メイクの時は、下地にクリームを塗る。
4. 乾燥肌だと感じたら、皮脂の成分を頭に入れて、表2の成分を補う。
5. マッサージによる血行促進は有効だが、あくまでもやさしくソフトに。
6. アルコール濃度が高いヘアトニックやアストリンゼント(収斂作用のあるもの)の使用は避ける。

 

 お日さまがなければ毎日がブルー。洗濯物も乾かないし、布団も干せません。かつては血行や新陳代謝を促し、皮膚の抵抗力も強めるといったことから日光浴がよしとされ、赤ちゃんにも推奨されてきました。ところが今や紫外線は、ガンやシミ・シワの原因とされ、日焼け止め化粧品の必要性ばかりが叫ばれています。

 たしかに紫外線は悪性黒色腫(皮膚ガン)との関係が指摘されています。悪性黒色腫は、転移による致死率が高い病気です。緯度との関係が濃厚で赤道に近いほど罹患率が高く、とりわけ18歳までに浴びる紫外線の量が悪性黒色腫の発症のリスクを高めます。罹患率の国際比較では、日本では低く、オーストラリアのクイーンズランドが最も高いとされています。また人種差があり、白人は有色人種よりも、罹患率が数倍高い傾向があります。
紫外線だけでなく、慢性的に刺激を受けること、あるいは衣類などでこすれること、傷などの外的な刺激も危険因子の一つと考えられています。実は、最も多い発生部位は足の裏なのです。

 紫外線量が増加しているオーストラリアでは、子どもを紫外線から守るための取り組みを強めています。その要点は「SLIP(長袖シャツを着る)・SLOP(日焼け止めクリームを塗る)・SLAP(つばの広い帽子をかぶる)」。帽子の着用は眼への紫外線を20%減少させ、サングラスは90%減少させるとして、子どもにも着用をすすめています。
日本の騒ぎ方と違うのは、対象が子どもであること、対策は日焼け止めクリームだけではないことです。日本でやっきになって紫外線対策に取り組んでいるのは、若い女性や中高年の方たちで、しかも顔のシミ・シワ対策。つまり美容のためであることが特徴的です。しかし、日本の紫外線量の増加は認められておらず(注1)、深刻な対策は必要ありません。対策をとるにしても、その必要があるのは大人より子どもです。  以上のことから、私はふだんは日焼け止め化粧品は使いません。シミ・シワ対策なら長袖、帽子、日傘、サングラスで十分です。日焼け止め化粧品を使う必要があるのは、海水浴、登山、スキー。またオーストラリアやハワイなどへの海外旅行のときです。

 日焼け止め化粧品には、紫外線散乱剤(注2)と紫外線吸収剤(注3)、またこの2種類を組み合わせたものが市販されています。私は肌が弱いこともあり、紫外線吸収剤は使いません。
紫外線吸収剤には、フェノール系化合物やフェノールに類似するベンゼン系化合物があり、安全性が問題とされています。これらの化学物質がシミやシワの原因となると指摘する専門家もいます。皮膚への刺激が強く、アレルギーの報告もあります。また、分解された紫外線吸収剤は化学的に反応性が高く、最終的に肌にとってよくない物質になることがあります。これが肌の弱い人がサンスクリーン剤にかぶれる原因ではないかと指摘されています。
そのため、紫外線吸収剤は製品への添加量が制限されています。しかし、乳液や化粧下地、ファンデーションなど、UVケア商品を三つも四つも使用すれば制限量を超えてしまうことも予想されます。
私は紫外線散乱剤、なかでもSPF値(注4)が30以下のものを選んでいます。アメリカやオーストラリアでさえ「効果は同じ」として、SPF30以上の商品は販売されていません。肌への負担を考えても、SPFが高ければいいというのは、おかしいのです。
また赤ちゃんや子どもの場合は、日焼け止めを使うのは、自分で顔が洗えるようになってから。幼い子には帽子、長袖で対応し、真夏の炎天下には決して連れ出さないことです。 

パラベンとは?

 化粧品に含まれる化学物質の中で、アレルギーを起こす可能性があるもの、発ガン性が疑われるものなど、安全性に疑問があるものについては、表示を見て確認したほうがいいでしょう。
 具体的には、殺菌防腐剤のパラベン(アレルギーを起こす可能性あり)、酸化防止剤のBHT(アレルギーを起こす・発ガン性のおそれあり)、赤色○号、黄色○号などのタール色素(アレルギー・発ガン性のおそれあり)などが当てはまります。
 これらは、食品にも配合されていますが、その量が違います。たとえば、パラベンは食品中よりも100倍も濃い量が許可されています。食品と違い、口から入らない、肌からはほとんど吸収されないと考えられているため、また化粧品は3年以上保存できるようにつくられているため、量が多いのは当たり前なのです。
 しかし、人によってはアレルギーを起こすことからみても、まったく吸収されないわけではなく、毎日使う化粧品の場合、注意が必要です。

 パラベンは、多くの化粧品の防腐剤として使われています。それだけ有用な保存料といえるかもしれません。他の保存料、たとえばフェノキシエタノールなどよりも、安定性にすぐれています。
 しかし、アレルギーのほかにも、環境ホルモン作用との関連を示唆するデータが報告されてもいるので、表示をよく見て、使い方を考えたほうがいいでしょう。パラベンにはさまざまな種類や呼び名があるので(表1)、表示を見るときには、注意が必要です。

パラベンとの付き合い方

 パラベンにはリスクがあることを述べましたが、化粧品が化学物質でつくられている以上、リスクを完全に避けることはできません。化粧品に保存性がなければ、これもまた困ります。
 私は、おしゃれの幅を狭めないためにも、使用頻度に応じて使い分けています。もしあなたがパラベンでアレルギーを起こしたことがあるなら、パラベンの入っていない化粧品を探す必要があります。でもアレルギーを起こさないなら、また化粧品には保存性が必要と思う人は、パラベン入りの化粧品はとても便利です。
 私はパラベンにはアレルギーを起こしません。ですからこんなふうにしています。
 毎日朝晩使う化粧水は、手づくりしています(本誌47号)。保存料は入っていません。すぐ使い終わりますから、保存性は必要ありません。
 たまにしか使わないファンデーションなどには、保存料が入っていないと長持ちしないので困ります。パラベンが入っているものを買い、冷暗所に置いて、できるだけ長く使いたいと思っています。

アレルギーは危険を察知する力

 私は子どもの時からマグロやヤマイモを食べると発疹が出るなど、さまざまなものにかぶれてきました。化粧品でもアレルギーを起こし、顔がトマトのように赤く膨れ上がりました。長男が血液の病気を持って生まれたこともあり、食べものや暮らしの安全性には、人一倍気をつけてきました。できる限り手づくりを心がけ、食べものを買うときには、食品添加物の中でも安全性に問題がある保存料やタール色素、酸化防止剤などが使われていないものを選んでいます。
 今やコンビニでも、そうした問題のある食品添加物は入れない商品を販売する時代なのに、2歩も10歩も遅れているのが化粧品。私は「毎日使う化粧品に、発ガン性が疑われるものを入れるな」と強く願っています。メーカーは「疑われていても、発ガンの証明はされてない」といいますが、お金を出して買い、毎日使う人の身になってほしいものです。
 世の中には、化粧品でアレルギーを起こさない人もたくさんいます。そんな人が、成分に無関心になってしまうのは仕方がないことです。でも、それはそれでハッピーなことですよね。  ただアレルギーを持つ私は、人よりも敏感に危険性を感じる力を持っているのだと思っています。誰にでも危険なものだけれども、敏感な人だけがいち早く察知できるのだと思うのです。だから「アレルギーを起こす人を、特殊な目で見ないで」とお願いしたいです。「明日は我が身」ですよ。

皮脂は免疫力の砦

薬用石けんは「薬用効果でニオイのもとをしっかり殺菌」「肌を殺菌しニキビも防ぐ」などと宣伝しています。汗の臭いを防ぐと強調した製品も多く登場しており、これから夏場に向けて、利用する人も増えそうですね。薬用石けんは、通常の化粧石けん(注1)とは異なり、薬事法で一定の効果を謳える医薬部外品です。その一定の効果ですが、たとえば医薬品は治療のための薬なので「治す」ことができますが、医薬部外品は「予防」のみ。ですからニキビを「予防」しても、ニキビを治すことはできません。
 薬用石けんがどのように宣伝され、またどんな薬剤が使われているかを調べてみました(表1)。
 主な薬剤の使用例は、殺菌剤、消炎剤、消臭剤、抗アクネ剤などです。薬用石けんに配合されている薬剤は、一定の効果がある反面、人によってはアレルギーを起こす、皮膚刺激があるなど、誰にでも安全とはいえません。そのほかさまざまな人体への影響が報告されています(表2)。

洗顔剤と合成界面活性剤

 ではその効果は、どの程度信用できるのでしょうか。たとえば防腐殺菌剤が配合されているのですから、菌を殺す力はあると誰もが思いますよね。しかし専門家によれば、薬用石けんの殺菌効果は、通常の石けんで洗うのと同程度だというのです。薬用石けんを使ったとしても、短時間洗っただけでは皮膚の常在菌(皮膚に常に存在する細菌)はほとんど減らないというのです。清潔に保つためなら、むしろ普通の石けんを使い、その洗い方に気を配るほうが効果的だと指摘されています。殺菌だけではなく、体臭やニキビ対策も石けんで洗えば十分だというのです。メーカーは薬用石けんの効果や「売らんかな」の宣伝文句には熱心ですが、アレルギーや皮膚刺激の危険性については、まったく明らかにしていません。「はちみつレモンの甘い香りで、お子さまにも楽しい」「チャエキスなど39種類の天然植物保湿成分がお肌のうるおいを保ちます」などのキャッチコピーに惑わされる人も多いのではないかと思います。
 また薬用石けんに配合されている防腐殺菌剤のトリクロサンは、耐性菌の問題や生態系への影響が指摘されています。トリクロサンは石けん以外にも歯磨き、消臭剤、柔軟仕上げ剤、顔用ティッシュ、まな板、ソックス、おもちゃ、医療器具など広範囲に使われています。

正しい洗顔の仕方

 便利な合成界面活性剤は私たちの生活に欠かせない存在となっています。いたずらに恐ろしがるだけではなく、毒性の強い合成界面活性剤 と、比較的安全なものとを区別し、毒性が強いものは皮膚に長時間つけておかない、日常的に使わないなど、使い分けていきたいものです。
 とりわけ洗顔に最も安全なのは石けんです。私は、化粧品はまずコールドクリームで落とし、蒸しタオルで毛穴を開き、よく泡立てた石けんで洗 顔し、それを10回くらいよくすすぎ、さらに肌が冷たくなるまで水で洗います。石けん洗顔が肌に合わないと訴える人がいますが、すすぎが足りな いと肌に残ったアルカリ分が刺激となりますので、水を替え、よくすすぐことが大切です。その後に化粧水をつけます。冬でもクリームや美容液とは 無縁で化粧水しか使いませんが、60歳でも、この洗顔方法で保湿の必要を感じたことはありません。もちろん化粧をしなければ、石けんは使わず に水洗いのみです。
 この洗顔方法は、これで落ちる化粧品を使っていることが前提です。最近のサンスクリーン剤やファンデーションの中には、汗をかいても落ち ない、泳いでも落ちないことを「売り」にしている商品もありますから、要注意です。そうした落ちにくい化粧を落とす強い洗浄力を持つ洗顔剤は、 皮脂を落とす力も強いことに注意してください。メーカーは落ちにくい商品を販売し、通常であれば使う必要のない洗顔剤をセットで買わせよう としているように思えます。 「石けんで落ちない化粧はしない」のが肌を守る基本です。またこれは、髪の毛のシャンプーについても同じことが言えます。
 とはいえ、よほどのことがないと、市販の洗顔剤やシャンプーの洗い心地を忘れるのは至難の業かもしれません。私も難病を治す目的がなけれ ば、洗うことを見直す気にはとうていならなかったと思います。いいのです。そのときからでも、遅くはありません。無理しないで、マイペースで考え 続けていきましょう。

薬用石けんに効果ある?

薬用石けんは「薬用効果でニオイのもとをしっかり殺菌」「肌を殺菌しニキビも防ぐ」などと宣伝しています。汗の臭いを防ぐと強調した製品も多く登場しており、これから夏場に向けて、利用する人も増えそうですね。薬用石けんは、通常の化粧石けん(注1)とは異なり、薬事法で一定の効果を謳える医薬部外品です。その一定の効果ですが、たとえば医薬品は治療のための薬なので「治す」ことができますが、医薬部外品は「予防」のみ。ですからニキビを「予防」しても、ニキビを治すことはできません。
 薬用石けんがどのように宣伝され、またどんな薬剤が使われているかを調べてみました(表1)。 主な薬剤の使用例は、殺菌剤、消炎剤、消臭剤、抗アクネ剤などです。薬用石けんに配合されている薬剤は、一定の効果がある反面、人によってはアレルギーを起こす、皮膚刺激があるなど、誰にでも安全とはいえません。そのほかさまざまな人体への影響が報告されています(表2)。
 ではその効果は、どの程度信用できるのでしょうか。たとえば防腐殺菌剤が配合されているのですから、菌を殺す力はあると誰もが思いますよね。しかし専門家によれば、薬用石けんの殺菌効果は、通常の石けんで洗うのと同程度だというのです。薬用石けんを使ったとしても、短時間洗っただけでは皮膚の常在菌(皮膚に常に存在する細菌)はほとんど減らないというのです。清潔に保つためなら、むしろ普通の石けんを使い、その洗い方に気を配るほうが効果的だと指摘されています。殺菌だけではなく、体臭やニキビ対策も石けんで洗えば十分だというのです。

昔ながらの摂家の効用

 メーカーは薬用石けんの効果や「売らんかな」の宣伝文句には熱心ですが、アレルギーや皮膚刺激の危険性については、まったく明らかにしていません。「はちみつレモンの甘い香りで、お子さまにも楽しい」「チャエキスなど39種類の天然植物保湿成分がお肌のうるおいを保ちます」などのキャッチコピーに惑わされる人も多いのではないかと思います。
 また薬用石けんに配合されている防腐殺菌剤のトリクロサンは、耐性菌の問題や生態系への影響が指摘されています。トリクロサンは石けん以外にも歯磨き、消臭剤、柔軟仕上げ剤、顔用ティッシュ、まな板、ソックス、おもちゃ、医療器具など広範囲に使われています。
 2009年7月に米国の環境・健康団体が、FDA(米国食品医薬品局)に医療以外でのトリクロサンの使用禁止を求める請願をしています。その理由は、医療用の抗生薬品およびバクテリア洗浄に対する耐性を獲得し、特に幼児や老人のような弱い集団にとっては問題である。燃焼やほかの化学物質と反応してダイオキシンやクロロホルムが発生する。内分泌かく乱作用がある。使用後に洗い流されて下水に排出され、水系や下水汚泥中に蓄積し、排出され、水系や下水汚泥中に蓄積し、生態系を脅かす。トリクロサンには石けんや水以上の殺菌効果はない、というものです(注2)。
 石けんは古代から人間がずっと使ってきたものです。動物の肉を焼いた時に、したたり落ちた油脂がアルカリ性の木の灰によって鹸化されて土にしみ込み、その土で洗ったら汚れがとれたというのが始まりといわれます。
 しかも石けんは環境に放出されると、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合して石けんカスになり、界面活性力を失い毒性もなくなります。石けんカスは水生生物の餌になるために生分解性がきわめて良好で、環境にやさしいこともわかっています。
 薬用石けんは、その効果が疑わしい上に、使う人だけでなく環境に対しても問題がある成分が入っているので、私は買う気になれません。顔や手洗いは、石けん素地100%の石けんをよく泡立てて洗い、しっかり洗い流せば、殺菌、消臭、抗アクネ対策も十分と考えています。

 
注1:化粧石けんは洗顔用や浴用などに使われ、薬用石けんとともに薬事法に基づき化粧品製造許可工場でつくられています。このほかの洗濯石けん・台所石けん類は雑貨石けんとよばれます。これは体の洗浄を目的として考えられていない石けんです。個人が手づくりした石けんは、そのほとんどは化粧品原材料を使用していない雑貨石けんとして扱われます。
注2:BeyondPesticidesとFoodandWaterWatchによる請願。
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_09/09_07/090715_triclosan.html

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