お店を開いて、13年たちます。とにかく、ぼくは古道具にこだわってきた。古いモノだけど、使えるから道具なんですよね。使えないモノは、売りたくない。だから、ウチで扱っているモノは、全部ぼくがバラして、キレイに安全にします。ドイツのお客さんに、ウチのアンティークは、キュートじゃないと言われたことがあります。なぜなら、ホコリもないし、汚れもないって。時代は、古いのかもしれないけどって …… 。13年間、どうやったらマトモなモノが手に入るかってことに、終始してきた。ネットショップやネットオークションで売るモノに、ひどい、危険なモノを見ますからね。ただ、古ければ価値がある、みたいな。
ぼくは、もともと自分が好きだったから、こういうことをやっているので、その好きだったという感覚からすると、ちょっと許せないモノがありますね。えっ、これを売ったのか、と思うとハラがたってくる。まあ、こうじゃなくちゃいけないと、考えすぎて、自分で自分をせまくしちゃったのかもしれないけど。でも、あるモノを売るとき、これは消耗品としてつくられ始めた時代のモノだから、何年かたてば、オーバーホールが必要ですとか、ちゃんと伝えてあげないとね。数年たてば、イタんできますよ、とかね。それを説明する勇気が、お店にないと、ね。苦しまぎれに、目先で売りやすいモノを売っていくと、この業界は、いい加減なことになってしまう。
お客さんにとって、その払うお金は、たいへんなお金なんですよ。それを生きたお金にするためには、これは、長い間はもちませんよ、とか言いたくないことも、言わなくてはいけない。プロは、それをわかっているわけですからね。…… 自分が楽しくて、お客さんにも喜んでもらえるっていう世界が、あるんですよ。お金は、追いかけたら逃げるんです。だけど、こっちが知らんぷりして無視していると、トコトコうしろから、ついてきます。それ、間違いないですね。