お人形を整えるのは、自分でやります。一体のお人形をお店に飾るまでには、かなり手間がかかりますね。100年以上も前のお人形ですから、仕入れた子たちの中には、下着をつけていなかったり、靴を履いていなかったり、たとえ履いていても100年前にはあり得ないビニール製の靴だったりします。洋服なども、化繊の現代物を着ていたり、かわいそうに丸裸の時もあるんですよ。だから、ウチのほうで、ちゃんとしたものに着せ替えてあげています。その子にあうサイズのパンツやシュミーズが手持ちにない場合は、私の手でつくります。アンティークドールは、初期の頃はドレスも下着もすべて手縫いだったんです。なので、私は自分で縫うときは全部手で縫います。
アンティークドールの髪の毛は、カツラになっているのですが、そこはお人形さんなので、子どもたちに遊ばれ、バサバサに切られている子も多いんです。その場合も、頭のサイズ、髪型、色など、その子に一番似合うカツラをなんとか探して付け替えるんです。そして、身に付けているものとは別に手間がかかるのが、ボディです。アンティークドールの場合、海外では欠け落ちていたり、手の指が数本折れてなくなっていても、お人形の価値にはまったく関係ないので、値段も左右されません。ヘッドは焼き物なので永久的ですが、革や木、コンポジションなどでできるようなものなので、100年もたてば部分的に劣化して傷んでくるのは、当たり前という考え方なので、傷んだままで売られるんです。でもやはり、そこは完璧を求める日本人。それで納得するはずもない。で、やむなく、修理となるわけです。
ボディの修理で一番気を使うのが、色合わせです。そのお人形のメーカーやつくられた年代、劣化の状態や100年くらい置かれていた場所の違いによる変色の度合いなど、同じ肌色でもお人形によってそれぞれ微妙な違いがあるんです。それを何色もの塗料を混ぜ合わせ、微調整をしながら塗っては乾かし、まわりの肌色と同じ色になるまで、何度も繰り返すのです。その作業だけで、何日もかかってしまうこともよくあります。そのほかにも、ヘッドをきれいに拭いて100年分の汚れを取り除き、キズの有無を確認することも、重要です。このような工程を経て、上から下まですべてよし、と自分が納得してからお店に出すんです。細かい手仕事は、もともと嫌いでなかったということもあり、まあ自己満足かもしれませんが、きちんと仕上げてお人形を飾ったときは、うれしくなりますね。