アンティーク・ドールは、それぞれに個性があるので、一個人のような感じ。お人形好きな方がよく言われるように、私も、あの子とかこの子とか言っております。なので、ちょっとした拍子にちょっとぶつかったりすると、思わず「あ、ゴメン」と、つい言ってしまいます。ここに長くいる子は、どうしても情が移りますね。だから、その子が売れた時は、行ってしまうんだなあという気持ちで送り出しますが、その子がいた場所にポカリと空間ができたような、少し淋しい気分にもなりますね。

私が好きな子は、美人だけどキツくない、やさしく、憂いのある子です。そういう子だと、長く持っていても飽きないですし、眺めていると、癒されます。自己主張の強い子は、なんだか見ていて落ち着かないんです。とは言っても、お客さまの好みはさまざまですし、いろんなタイプの子たちをお店に揃えなければ、と思いながらも、どうしても自分好みのやさしい顔だちの子が多くなりますね。お客さまのほうも、自分の好みに合った顔だちの子を扱うお店を選ぶようです。最近では、来店されるお客さまよりネット販売が多くなりました。以前は地方から、電車を乗り継いでお店にきていただく方もいらっしゃいました。というのも、お人形は、やはり現物をごらんになるのが一番ですから。

ネット販売では、気になったお人形の写真画像を、お客さまからの要求に応じて、いろいろな角度から撮ったものを送るようにしています。それでも、現物をごらんになることをおすすめしております。アンティーク・ドールは、お安いものではありませんし、まったく同じ顔の子は、二体といないものなので、じっくり考えてご自分のフィーリングにピタッとはまった子を選べば、きっと末長くかわいがることができると思います。そしてそれは、はるばる海を渡り、遠く日本までやって来たその子を、幸せにしてあげることでもあります。そして、その子が見つめてきた長い歴史の１ページに、あなたも加わることになるのだと思います。 （おわり）