紅テント

紅テント

唐十郎を知り作品を読み漁ったのは、高校生になったばかりの頃でした。
今でも、近所にある鬼子母神の境内の、木々のあいだに建ち上がる紅テントを見ると心が騒ぎます。
上演が始まる夜の闇の中、人の熱気で膨れ上がった紅いテントは一層迫力を増します。

紅テントは唐十郎率いる状況劇場が1967年に新宿の花園神社境内で始め、雑司が谷の鬼子母神では近年、春と秋に公演が行われています。

舞台と音響照明を操作するスペースに観客席200ぐらい?(地べたに座るし、混めば立見も)。
それだけの大きさの空間を6本の柱で支えています。
それらの支柱がテントのフォルムを特徴的なものにしていますが、氏が「空に突き出ているような形にしたかった」と何かの本で読んだ時に納得したのを憶えています。
床は土の上にシートとゴザだし、壁の機能は屋根で兼用できると思えば、やはり建築における屋根は重要だと感じます。

紅テントでは出演する劇団員が全てを取り行います。
何でも分業化、専門化してしまう現代に、照明や音響はもちろん、テントやセットを設営、受付をし、観客に整理券を配り、整列させ靴袋を渡して誘導する・・・。
演劇という創作を裏付けるそのリアリティに圧倒されるのです。

公演が終わればテントは跡かたもなく消えてしまい、まるで夢から醒めたようです。