空間の力

たのしい出来事がありましたので紹介します。

27年前に設計した小さな集合住宅から発信された話題です。
集合住宅の名は「屯」タムロと読みます。

このご時世にかんがみ、オーナーが家賃を値下げ?
そういう人なのです。屯のオーナーは。

以下は屯の住人からオーナーに送られてきたメッセージです。
(オーナーがうれしそうに僕に転送してきました)

『お世話になっております。
屯○号室の○○です。
この度は、新型コロナウイルスによる自粛及び緊急事態宣言による状況から、
寛大な対処をご提案くださいまして有難うございます。
住民皆、XXさん(屯オーナー)のお心遣いにとても感謝しております。

ほんの2か月前まで、ちょっと外で炭を焚いていたら、近所の子供たちが集まって、
最終的には近所の大人も集まって19時くらいまでいましたし、
その前の夏には中庭でランチしたり、楽器持ち出して演奏会になったりと、
屯は相変わらず居心地の良い空間となっていました。

今は、皆さん在宅しておりますので、気がつくと中庭を介して会話をしています。
それはそれで楽しく、やはり中庭あってこその屯だなと改めて思いました。

また、皆で集まってワイワイとできる日が来ることを楽しみに、
今は少しだけ中庭で集まるのは我慢かなと思っています。
住民は皆元気です。
お互いに消毒やマスク、その他情報も共有して協力しています。
それと、屯クラスターになってはいけない!と皆で気をつけています!

XXさん、ご家族の皆様、どうぞお気をつけて安全にお過ごし下さい。
略儀ではありますが、メールにてお礼申し上げます。
屯○号室
○○○○・○○(夫婦の名)』

 

○○さんから送られてきたスナップ

○○さんから送られてきたスナップ

設計中、打合せと称して用もないのにやって来るオーナーと通ったのが居酒屋「屯」
店の女将に名前の由来をうかがったところ、
「屯」は人が集まり”タムロ”するという意味で、屯田兵のトン。
”トン”は我々がつくろうとしている集合住宅にピッタリの意味合いだった。
というわけで・・女将の了解を得て名前を使わせていただいた次第です。

設計では、集まって住む利点や交流を最大限に発揮できる中庭を、まずはセット。
結果として、中庭の持っている力の凄さと、
”建築は人をつくる”という事実とを、あらためて感じさせられました。

 

撮影:岡本寛治