エチケット

たいがいの場合、南の庭ができるだけ広くなるように家は北側に寄せて建てるものだ。庭の向こうの隣家も同じように北に寄せるから、庭先に隣家の北の壁面をながめることになる。
誰しも太陽が好きだから、庭側に大きな開口部を設ける。トイレ・洗面・浴室・納戸などは北側に寄せられ、諸般の理由から窓も小さい。排気口があったり、場合によっては排水管やガス管やエアコンのパイプなどがむき出しになっていたりする。
居住者の心情としては庭側ををきれいにしておきたい気持ちがあるし、住宅の広告写真はこれ見よがしに庭側ばかりだ。
太陽光を楽しんだり庭をながめたりする視線の先に隣家の北壁がある。小窓や排気口などがでたらめに並んだ見苦しい隣家の壁面を隠すために庭木を植える。それでも隠しきれなくて、他人の視線が気になるからとせっかくの大きなガラスもレースのカーテンで覆わざるを得ない。さみしいですねぇ。

ひとさまに迷惑をかけない。これがエチケットとというものでしょう。
家の北面はなかなか美しくまとめられないけれど、せめて見苦しさを極力減らす。それはデザイナーとしてのエチケットだと心得ております。

エチケット

撮影:岡本茂男