俗世界を離れた別天地「こけむしろ」を訪ねて

「うれしと思ひて、ここかしこ遊び廻りて、ありつる苔のむしろに並み居て、」(徒然草)。

建築家の白井晟一が和室の天井に茣蓙(ござ)を張ったことは、あまりにも有名であるが、ござも含め、い草、わら、竹などで編んだ敷物を莚(むしろ)という。

愛媛県西予市宇和町信里の里山に手作りの庭園がある。総面積2250平方メートル(680坪)。棚田の跡地一面に苔が敷かれている。この里山を訪れたのは、雲の低い日だったが、桧林から流れてくる心地よい風を背に、静寂と豊かな空間を与えてくれる。

苔を敷きつめた「こけむしろ」の庭園を営む村上安由さん。脱サラし、2000年(平成12年)に実家の水車小屋を改装して始めた料理店の屋号が「苔莚(こけむしろ)」。
想い描いて苔の世界を作り2005年(平成17年)に完成。料理店は2011年(平成23年)に閉め、今現在は庭園隣接の喫茶で来園者をもてなしている。

こけむしろ