錯覚補正

見た目の「なんとなく違和感がある」を「なんとなくいい感じ」に変えるにはちょっとした <おまじない> が必要だ。

寺などにある丸窓、じつはまん丸ではない。
左官屋さんがためつすがめつ、鏝で塗ったり削ったりしながら何度も修正をくり返すうちに丸窓が完成していく。ところがこの丸窓、すこしだけ横に長い。それでも人の目にはいい感じのまん丸に見える。
丸窓の <おまじない> は左官屋さんの目と直感だった。

景色を正方形に切り取ろうと正確な寸法で窓をつくると景色は縦長に見えてしまう。
そこで <おまじない>
この場合は僕の目と勘で正方形崩しをすることになる。

天上面や鴨居の水平線も正確につくると人は違和感を感じる。
天井はそのままでは圧迫感を感じたり、たるんで見えたりするから大工さんは中央をすこし持ち上げる。どのくらい上げるかは親方から教わった知識と自身の経験と勘による。
鴨居もやはり中央をすこし持ち上げて水平に見せる。
大工さんも <おまじない> を使っていたのだ!

丸や正方形がゆがんで見えるのは人の目がふたつ横並びになってるせいだろう。
地平線や水平線の場合は地球の輪郭線がすこし膨らんで見えるから、そのゆがみ具合がわれわれの DNAに刷りこまれているせいではないだろうか。

そんなことをボーッと考えながら今日もスケッチをくりかえしている。

錯覚補正