モビールは大人のインテリアとして使ってもいいのですが、元々は寝ていることしかできない赤ちゃんの目を喜ばせてあげられる知育玩具として利用されていました。僕もまずはそこからと思っていて、赤ちゃんと誰よりもその側にいるママに気に入ってもらえるモビールを作りたいというのが一番にあります。
最近、ママからの言葉もたくさんいただけるようになり、その中でも最も多いのが、「赤ちゃんがモビールを見て喜んでいる姿を見て、私も癒されました!」というもの。それこそモビールにとって一番の褒め言葉で、赤ちゃんに喜びを、ママに癒しを贈ることができれば、それは私にとって、良いモビールというわけなのです。いつもそこを目指してはいますが、今回は特に意識して作りました。「月の少年」のリモデルを予定していたこともあり、テーマはすぐに「月」と決まりました。ママと赤ちゃんから、すぐに「月」と「星」をイメージしたのです。
女性ホルモンの周期と、月の満ち欠けの周期が近いことはよく知られています。「月」は女性にとって、特別な意味をもつシンボルのような気もします。今回のモビールは、不思議とすぐに作り上げることができました。前回の「木洩れ陽」はさんざん悩んだ末に生まれたものですが、今回はあっという間にできました。最初から完成までの絵が浮かんでいたのです。家族に見立てた「月」、そこに赤ちゃんのような「星」、そして二匹の「天馬」が駆け巡る…。三日月はシーソーのようにも見えるので、よりモビールならではのバランスが意識されます。そして、ぐるぐると回る、巡る、という点でもモビール自体が月の周期を感じさせます。
今回、作り終えて感じたことがありました。モビールが男性より女性に好まれるのは、単純にモチーフが可愛らしいからと思っていましたが、それだけではないように思うのです。モビールの動き(回る=周期)やバランスを保つことが、どこか「女性らしさ」とつながる部分があるのではないでしょうか。ママと赤ちゃんのためのモビール。男性はさしずめ「天馬」でしょうか。月の周りをぐるぐると回り、近づいたり離れたりしながら、見守っているのです。
- 「紙」と「糸」だけで製作された新しいタイプのモビールを製作する、名古屋のモビールメイカー「マニュモビールズ」代表。日本発のプロダクトを日夜研究し、世界中の家庭へ届ける事を目標に活動中。