靴屋さん、がんばる。学生は、どこへ ?

ミマツ靴店

 

神保町の交差点から水道橋に向かって左側、5,6軒目のところに靴屋さんがある。靴屋さんがあるな、となんとなく思っていたら、『ちくま』2月号(筑摩書房刊)に、その店、ミマツ靴店の話題が載っていた。店の歴史を語る中に、こんな味な話もあった。

〈神保町は学生街だったと君子さん(註・お店のご主人の奥さまのことです)は述懐する。学生服の店が数多くあり、空に宣伝のアドバルーンがゆらゆらと上がっていた。学生靴の店も、すぐ近くに五軒、神田エリア全体では二十軒以上あった。「そうこうするうち会社が増えて、勤め人の人たちも大勢になっていったでしょう?  あ、そうそう。小学館に集英社に岩波書店……。出版社が多いから、路地に小さな印刷屋さんがいくつもあって、暮れには、『好きな靴を選びなさい』と五、六人の従業員を連れて来る社長さんがずいぶんいましたよ。お正月休みに、新調した革靴を履いて田舎に帰らせてあげるならわしだったんでしょうね」〉

いま、交差点を歩く人は、ほとんどが、勤め人のように思われる。学生は、どこへ行った ?   ところで、この連載のタイトルは『絶滅危惧個人商店」(井上理津子)である。