2017年3月6 の記事一覧

金沢文学散歩 1

金沢文学散歩

 

『チルチンびと』春号。特集 〈金沢 ― このまちに生きる12人の女性たち〉にちなんで、ビブリオバトル ・ 金沢篇。


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C さん     この間のこのブログにも出てしまっているんですが『加賀金沢  故郷を辞す』(室生犀星・講談社文芸文庫)。このなかの「文学者と郷土」という章で、自分の文章についてふれているところが、おもしろくて。
〈つまり、私の文章の中にも、金沢にふるようなうそ寒い霙の音もすれば、春先になったこのごろの温い日の光も、麗かにさしているところもあるのでございます。つまり金沢の気候が東京にいても、私の机のまわりにいつもただよい、感じられているのであります。
そして、こうつづくのです。
〈もう一つ言えば私の文章の辿々しいところは、金沢の方言や訛がはいっていて文章の切れ味が甚だ悪いのであります。〉

B さん    私は、若者の鬱屈を描いた 、中野重治 『歌のわかれ』から(『村の家   おじさんの話    歌のわかれ』講談社文芸文庫)。初めのほうにある町の描写が好き。
〈金沢という町は片口安吉にとって一種不可思議な町だった。犀川と浅野川という二つの川がほとんど平行に流れていて、ふたつの川の両方の外側にそれぞれ丘があり、ふたつの川のあいだにもう一つの丘があり、街全体は、ふたつの川と三つの丘とにまたがってぼんやりと眠っている体であった。そうして、街の東西南北にたくさんのお寺がかたまっていて、町の名にも寺町とか古寺町とかいうのがあった。〉
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『チルチンびと』春号は、3月11日発売です。お楽しみに。