2014年12月 の記事一覧

ワセダ、三朝庵、年の暮

三朝庵

バスや地下鉄を降りたひとたちが、穴八幡宮や放生寺へ、流れていく。これは、冬至から節分まで、毎年見られる風景だが、いつもより、参詣するひとの数が、多いようだ。景気が、上向いたからか、そうでないからか。アベノミクスの効果があったのか、なかったのか。わからない。お参りがすむと、ナナメ前の角の、蕎麦屋・三朝庵に入っていくひとが、多い。

馬場下の三朝庵といえば、ワセダにご縁のある方なら、知らないはずはない。歴史は古く、店の入り口には、大隈重信家御用、だったという札が、さがっている。かの会津八一も、お得意で、「先生のご注文はいつも、ざるそば三枚だった」と聞いたことがある。

そばのなかに、柚子が入っていて、これで、金銀融通のご利益があるという。その柚子の浮かんだ天ぷらそばを食べて、帰りに、貼り出してある品書きを撮った。「広場」ファンのみなさまに、吉運のお裾分けのつもりである。よいお年を。

 


師走の手創り市

雑司ヶ谷手創り市

今年最後の手創り市へ行った。薄曇り。さむい。それでも、午後になれば、人出もあるだろう。今日の目的は、道草庵、山本さんのところで、縁起物のカメを買うことだ。今年のカメは、稲の種類とデキの具合で、グリーンっぽい。昨年、このカメと輪飾りを “ 広場 ” のプレゼントにしたのだった。もう、一年たつんだと思った。カメは、人気があり、よく売れる。なかには、2200円のカメを、200円まかりませんか、と聞く人がいた。

……   どこの国でも、どんな祭りでも、にぎやかなところは、なぜか侘しさがつきまとう。提灯もって、橋を渡ってゆくおんなの子。そっちへ行っても、月見草はまだ咲いていないよ、いまはまだ冬だから。…… と、書いたのは、寺山修司だった。

 


蕎麦がき

少し早めの、年越し蕎麦ならぬ、年越し蕎麦がき。

ふわっふわっに練られた蕎麦がきが、ゆず香る木桶の中に

気持ちよさそうに浮かんでいる。

お味噌や薬味でおいしくいただいた。

 

 


ヒイラギの棘

リース

ヒイラギの棘と格闘しつつ、手にたくさんの傷をつけながら作成したリース。今年の痛い思い出となりました。

そんなヒイラギ、この季節しかほとんどでないうえに、痛い思いをして作る生産者の方が激減しているらしい… ということで用意してくれた花屋さんはヒイラギを手に入れるのも一苦労だったようです。

でも、やはりクリスマスは”ヒイラギ”かと。

 


焚火を囲んで薪割り大会

 

 

彩工房 暮らしと住まいのセミナー」の第12回は、昨年も12月第1週末に開催して好評だった薪割りイベント。好天に恵まれて薪割り日和となり、参加者スタッフ合わせて50名近くが集まって、賑やかにスタートしました。

まずは山から木を伐り出すところを見学。作業場まで運び、チェーンソーで薪割り用の丸太にしていきます。細かい枝は、たき火用や工作用に。

この丸太づくりや枝払いも体験できます。実際に伐ってみる、触ってみることで、木の固さ、湿り気、匂いなどを感じて、眺めているだけではわからない感触を味わうことができました。参加者の皆さんは、木の扱いに手慣れた感じの方も多く、子どもたちもびっくりするほど集中力があってよく動き、働き、全員がスタッフのよう。どんどん丸太が運ばれて、経験者の手際よく薪を割る姿に感心の声があがったり、初心者は薪割り指導の下、苦心しながらも徐々にコツがのみこめて歓声が上がったりと、盛り上がります。


お昼は、焚き出し隊が作ってくれた釜焚きご飯とトン汁をいただきました。青空の下、よく動いた後のあったかいご飯が身に沁みます。

食べ終わると皆何も言わなくてもさっと作業開始。枝を刈り、丸太を伐り、薪を割り・・・働き者なのです。一方で、細くて長めの丸太を使った椎茸の菌打ちコーナーが設けられました。うまくいくと5年ぐらい立派な椎茸が生え続けるのだそう。他方では、小さな木の小枝をつかった手芸教室が始まりました。一本の木で、こんなに大人も子供も夢中になって遊べるとは。

作業もひと段落ついたころ、製材所の見学へ。倉庫も杉板張りで美しいのです。伐り出した木を、製材で出た木くずを燃やしたリサイクル熱源でじっくりと乾燥させる、燻煙乾燥庫も見せてもらいました。木の強さと美しさを保ち、防虫や防腐のためにもいいとのこと。

 

見学が終わると、焚き出し隊がこんどはおやつを作って待っていてくれました。焼き芋、焼き林檎、焼きバナナ。じっくり焼かれて甘みの増したお芋や果物は、ほかほか、トロトロ!美味しい!冬の野外活動の醍醐味はやっぱり焚火料理!

たった一日とは思えないほどいろいろな経験をさせてもらいました。木は偉大。火も偉大です。木や火を扱うには、体力や想像力や共同作業と、さまざまな能力が必要で、一人ではできないことだらけ。森の仕事をしている方々への敬意が改めて沸きました。私はお手伝いで行ったつもりが、参加者の皆さんのほうが、ずっと知識と経験も豊富で「暮らし力」の高い方が多く、教えられることばかり。何時間も黙々と小枝を運び続けたり、小さな薪を作り続けたり繰り返して、疲れたとか飽きたとか言わない子供たちの集中力と好奇心にも拍手を送りたいです。

12月恒例になりそうなこのイベント、いまから来年が楽しみ。彩工房さん、参加者の皆様、ありがとうございました!

 


男の料理

こちらのお弁当、知人の男性(パパ)が二人の子供の為に作ったものです。
これを見た時、『ウーーム』と唸ってしまいました。 

凄い、凄すぎる。
オラフもかわいくて、(男の子と女の子の二人分のお弁当です)
とても不器用な私には、きっと、将来、ぜったいに作れないキャラ弁です。。

 


カリフラワーのポタージュ

 

カリフラワーのポタージュをつくってみた。

ボイルして、撹拌するだけで、

カリフラワーってこんなにおいしかったんだ。

 


忘年会

風土社 忘年会

風土社の忘年会が、12月12日、ひらかれた。建築家の方をはじめ、日ごろ、おつきあいいただいているたくさんの方たちで、賑やかだった。カンパイの音頭は、平良敬一氏。「おめでとうございます。いや、ちょっと、これじゃあ、早いか」と、笑いを誘った。

『アートの地殻変動』(北川フラム著)という本のなかで、平良さんが、インタビューに答えて、こう語っているのを思いだした。

〈みんな歴史を忘れちゃったんじゃないだろうか。歴史から離れてしまうと、課題を背負うことができないから、個人単位の趣味的な建築になっていく。希望を捨てないようにしようと思っているけど、どこに希望を託してよいのか残念ながら分からない。「建築ってなんだったっけ」ってもう一回、考え直す気分になっている。〉

どうかお元気で。

みなさま、よいお年をお迎えください。


続・「火のある時間」ビブリオ・バトル

続・「火のある時間」ビブリオ・バトル

『チルチンびと』の次号は「火のある時間」が、テーマだよ。じゃ、それにちなんだビブリオ・バトルはどうかな。で、集まった6人。

………

Mさんは、『父・こんなこと』(幸田文・新潮文庫)だと、当然のように言う。
〈薪は近所の製材所から買った屑木で、とんと柱とおもえる角材だったから、木性がよくてさほどの力もいらない筈だったけれども、私は怖じて、思いきってふりおろすことができなかった。〉
父の目、教えをつねに感じながら、の暮らし。そこからうまれる、ぴりっとした緊張感の漂う文章。これはもう、読んでいただくほかは、ありませんねと、ウットリして言う。

Kさんは、『森は生きている』(サムイル・マルシャーク作・湯浅芳子訳・岩波書店)を、さも、いとおしげに。ご存じ、大晦日の夜、一月から十二月までの精が、森の中で、出会う。
〈たき火のまわりに、十二の月たちが、みんなすわっている。みんなのまんなかにままむすめ。月たちは順番に、たき火の中へそだを投げこんでいる。〉
そして、うたうんですよ。〈燃えろよ燃えろ、あかるく燃えろ 消えないように !〉。
何度この物語を、読んだり、舞台を見たりしたことか。

私の番になった。『ヨーロッパ退屈日記』(伊丹十三・新潮文庫)。そこに「三船敏郎氏のタタミイワシ」の話がある。ヴェニスの超豪華ホテルに泊まっているとき、三船さんが、ジョニー・ウォーカーの黒札とタタミイワシを三枚持って現れる。しかし、タタミイワシを焙る手だてがない。
〈夏も終わりに近いヴェニスの夜更け、リドの格式高いホテルの一室で、クリーネックスは音もなくオレンジ色の炎を出して燃え、香ばしい匂いが一面にたちこめたのです。〉
タタミイワシ、ミフネ、ちり紙、リド…… その組み合わせ、 絶妙でしょう?

………
バトルにはならなかったが、楽しい夜になった。

 


「火のある時間」ビブリオ・バトル

「火のある時間」ビブリオ・バトル

『チルチンびと』の次号は「火のある時間」が、テーマだよ。じゃ、それにちなんだビブリオ・バトルはどうかな。で、集まった6人。

………

Aさん、最近読んだ『優雅なのかどうか、  わからない』(松家仁之・マガジンハウス)が、オススメ。
〈佳奈は新聞の一ページ分をちぎって丸め、それを四つ、レンガ台の真ん中にのせた。新聞のボールをまたいで囲うように、薪を井桁に組んでゆく。二本の薪が、たがいちがいに三段かさなった。
「マッチありますか?」〉
離婚をした。…… という書き出しで始まる。男とその周囲の女との物語ですが、キレイな文章でキモチがいい。後半、不具合の暖炉の描写がこまかく、そこが、好きなんですよ。

Yさん、ちょっと前のですが『日日雑記』(武田百合子・中公文庫)。銭湯の煙突掃除屋さんの話が、あるんです。
〈菰藁を体全体に幾重にも巻きつけた掃除屋さんは、二十三メートルの煙突のてっぺんに上り、わが身を掃除ブラシにして筒の中の煤をこそげ落しながら下降する。煙突一本四十分かかる。一本九千円。銭湯では一年に一回、煙突掃除をするのだそうだ。〉
ある日、テレビで見たという職人の話、百合子さんの筆にかかると、いいな。

Hくん、『ヘミングウェイ全短編 1』(高見浩訳・新潮文庫)の「われらの時代」から。
〈松の切株を斧で割って何本か薪をこしらえると、彼はそれで火を焚いた。その火の上にグリルを据え、四本の脚をブーツで踏んで地中にめりこませる。それから、炎の揺れるグリルにフライパンをのせた。腹がますますへってきた。豆とスパゲッティが温まってきた。〉
ね、男っていうカンジでしょう。いいんだ、これ。

………
(つづく)