九州に行ってきました 大分・日田 ヤブクグリ編

そもそも今回九州にやってきたのは、昨年秋に広場のイラストでおなじみ西淑さんの紹介で訪ねた、京都の nowakiさんが京都宣伝係を務める「ヤブクグリ」について教えてもらったのが始まり。『雲のうえ』や『飛騨』など地域密着型のフリーペーパーの編集人でもある画家の牧野伊三夫さんが、日田市観光協会の黒木さん、日田リベルテの原さんらと共に、林業再生で町を元気にしようと発足したこの会は、地元の新聞社さんや市長さんをも巻き込んで活動の輪が広がりつつあるという。

東京に戻り牧野さんにお電話してみると「今ちょうど日田からあんまり出ない日田リベルテの原さんが来てるから、一緒に飲みますか?」といきなりのお誘いだ。そんなレアな機会を逃してはとvigoと一緒に会いに行った。牧野さんは「飛騨」と「日田」の共通点に面白さを感じ「飛騨日田てぬぐい」を制作したり、見ようみまねで昔ながらのいかだづくりに挑戦して筑後川で川下りをしたり、またそれが話題になるという素早い行動力と求心力がある人なのだが、アグレッシブな雰囲気がまったくない。落語家みたいな味のある喋り方のせいか、熊さんみたいな風貌のせいか。いつのまにか皆がその茫洋とした牧野節に巻き込まれていってしまうのだ。

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というわけで日田へ来た。博多から日田へは「 ゆふいんの森」という特急でいくつもりだったのが、全席予約制でどの便も満席と大人気。急遽バスに変更。次回はこれに乗ってみたい。

お昼は寶屋本店で「ヤブクグリ」考案「きこりめし弁当」をいただく。杉の間伐材を再利用した曲げわっぱを開くと、ごはんの上には丸太に見立てたゴボウがゴロリ。添えられたミニノコギリで切って食べます。

お弁当タイムが終わると、午後は江崎次夫・愛媛大名誉教授による「クラゲが山にやってくる」という講演会。江崎先生は大量発生している越前クラゲを乾燥させクラゲチップをつくり、その保水力と栄養分で山林を元気にできないか。という研究をされている方。価格と効果が見合ったらすごく画期的だと思う。

続いて田島山業の代表・田島信太郎さんのお話。「林業は今、たべていけない。まずはそこを認識しないと」という言葉がのっけからつき刺さる。林業にはとにかく手がかかる。そして気候にも左右されるし、外材との戦いには世界経済も大きく影響するし、同じ杉といっても種類や産地によって全然違うのでその性質をよく知りぬいていないと商品化もできないし、真面目にやろうとすればするほど採算がとれない。生産者の努力だけではどうにもならないことも多く、消費する側や政治の意識改革も急務。これは特別意識の高い少数派、みたいな人ばかりが背負う問題ではなくて、山を守る→生態系を守る→自分や子供の命を守るという意味で誰もが無視できない問題。『チルチンびと』も創刊から十数年そういったメッセージを出し続けている雑誌だけれども、田島社長ももう二十数年「断固森林を守る。いい木を育て、子供たちに伝える」ということを続けている人で、林業の現場からの正直な言葉が心に残った。

 

しばらくフリータイムがあるのでどうしようと思っていたら、福岡のデザイナー梶原さんが「豆田を案内しますよ」と話しかけてくれたので、またもや遠慮なくお言葉に甘えた。日田豆田は天領として栄えた町で江戸時代からの商家や土蔵が多く、街並みも電柱を地下に埋めてあったりと、伝統が色濃く残る重伝建地区となっている。もうすぐ始まるお雛祭りや、秋に花月川(筑後川支流)で行われる千年あかりなどでは大勢の人が訪れる、美しい町です。

途中寄った日田の産業振興センターではトライウッドさん制作の、間伐材でつくった薄い木皿を発見。なんと5枚入り210円。可愛くて、ピクニックやキャンプにもってこいです。あまり巷で見かけないけれど、これは欲しい人多いかも。

 

懇親会では、もみじにまず驚き、つづいて納豆入りの高菜巻き、鮎のうるか、日田焼きそばにちゃんぽんなど郷土料理三昧。また、奇しくもこの日、誕生日を迎えた黒木会長のお祝いに日田民謡と踊りが披露されるなど日田ムード一色。ここでは、この後大変お世話になる「すてーき茶寮 和くら」の古田さん、松浦市のPRが頭に残りすぎて「松浦さん」とインプットされた島本さん、別府のキャンプ場に勤める「桐ちゃん」こと豊島さん、「PERMANENT」を制作している定松さんご夫妻、地元誌をはじめいろいろな分野で活躍されているフリーライターの小坂章子さん、東京からいらしていた建築家の長谷川敬さん、などなど話せば話すほど魅力的な人達とも出会い、その後天領日田洋酒博物館へハシゴして、和気藹々と日田の夜が更けていきました。

 

大分・小鹿田焼編に続く