人間の業


来月頭に引っ越すのだが、時間があまりない。厄介なのが、おびただしい数の夫のレコード&CD。一生かけても私はこの10分の1も聴くか怪しい。そもそも夫もこれを全部聴いてるのか?甚だ疑問だが、ちゃんと聴いているそうだ。ある日、「これ100枚くらい残してあと処分したらスッキリするね!」と半分冗談で言ってみたら、この世の終わりみたいな、魂が抜けたみたいな顔になってしまい、ちょっと反省した。冗談でも言ってはいけないことがあるのだ。

 

見積もりに来てもらうと、案の定「レコードは、ぴったり合うサイズの段ボールがないんですよね。緩衝材を入れたとしても、品質の保証ができないので、ご自分で荷造りされたほうが・・・」って。やっぱりね。

 

引越しやさんが帰るや否や、1.5ℓx8本入りの飲料水の段ボール探しの旅に出る夫。世のレコードマニアの知恵袋で、LPレコードを収めるのにこれがちょうどよいサイズらしい。重くなり過ぎないくらいの量がきちんとおさまり、取っ手もついている。とっても便利。意外と手に入りづらいので、近所のありとあらゆるスーパードラッグストア、コンビニなどを駆けずり回る。一体何往復したのだろうか。せっせせっせと巣に餌を運ぶ、働きアリみたいだ。

 

どうしても捨てられないほど大事なものを、小さなトランクひとつに納まるほどしか持っていない私は、宝物のために奔走し、その面倒な作業をさも楽しそうに一心不乱に行う夫の姿が、面白くも羨ましくもある。

 

そんな私でも引っ越し前に必ず夢中になる作業がある。本棚整理だ。なにもいま読まなくてもいいようなものに、とっぷり読み耽ってしまう。雑誌の切り抜き地獄についついハマり、片付けるはずがどんどん散らかしてしまう。 つくづく人間って、不思議です。