森のお手入れ-林業体験- に行ってきました

 

第15回「彩工房 暮らしと住まいのセミナー」は「森のお手入れ-林業体験-」。6年前、彩工房さんが北山の一角に植えた500本の杉の幼木が、雑草や茨のツルに負けたり大きな節が出来たりしないように行う下刈りと枝打ちの体験と、野外ごはんを楽しもう、という企画。朝から本降りと小雨をいったりきたりの不安定な空模様の中、たくさんの方が参加してくださった。 しばらく空の様子をみながら「京都北山杉の里総合センター」をお借りして、丸太を見学したり、山のお話を伺う。

北山杉は、細く長く滑らかで艶のある美しい木肌が特徴で、古くから京都の文化を担う美しい数寄屋づくりや茶室に用いられてきた、とても歴史と伝統のある貴重なブランド。植林後6~7年ごろから4年ごとに枝打ちを繰り返す。そのときとてもよく切れる鎌や鉈で枝をえぐるように一発で落し、節が残らないようにする。この伝統的な枝打ちは素人には大怪我の元なので、今回は大人も子供も初心者こぎりを使って行うことになった。

山主のお一人、山本さんは雨の日に一般の人が大勢で山に入るのは気が進まないなぁとしぶしぶ顔。「だいたい、どうやったって節があるのが杉やから。枝打ちして、綺麗にしてっていうても残るところは残るし、とってしまっても節の根っこは奥にあるしな。枝打ちせんでもべつに、どうってことない」・・・ええっ、そうなの!? と思いながらも「枝打ちするのは人間の都合」という言葉に、木の命を人間の都合でいただいていることへの謙虚な気持ちを感じた。その後も「ヒルは衣服の隙間から入ってきて吸い付かれて取るとバーッて血ぃが出るし、サルも嫌うっちゅうイバラがあって、もうそれは触ったらぜったいあかん。刺さってとれへんようになる」とますます皆をビビらせるようなことを言いながら、実際に山に入ると、みんなが怪我をしないように注意深く目を配りつつ、道具の使い方や枝の伐り方を丁寧に教えてくださる。

皆がだんだん要領をつかみ、夢中になって枝打ちを始めると、どんどん空間が開いて薄い光が差し込み地面が明るくなってきた。ぬかるんだ地面で泥だらけになっても、心は清々しい。薪割り教室のときも感じたけれど、子どもたちも一旦山に入るとりりしい顔になって、大人顔負けの根気と集中力を見せる。「みんなでやるとあっという間やな」と、主催の彩工房、森本さんも感動の面持ち。


枝打ちの途中、数人は料理班として別れ、おなじく山主の和田さんの庭をお借りして、ご飯の準備に入った。地元のお母さんたちが用意してくれた山盛りの山菜を、壊れたキャタピラを再利用したかまどで天ぷらにしたりバター焼きにしたり、ダッチオーブンで丸ごとチキンをつくったり、伏見の料理屋のマスターがいらしていたので鹿肉ステーキを焼いていただいたり、大きい釜でご飯を炊いたり・・・とワイルドで豪勢なお昼ご飯になった。

 

無事に雨も上がり、晴れ間すら見え始めて、食も進むし話も弾む。山活動をすでに行っている人たちと、まだまだこれから、という人たちとも少しずつ繋がりが生まれそうな雰囲気だった。山での活動は、経験者の知識が不可欠なのはもちろん、初心者も自主的に動けば動くほど楽しくなる。彩工房さん、山主さん、参加者さんたち、全員の力が集結して、楽しくて密度の濃い、貴重な時間を過ごすことができた。

 

帰ってから「森からの手紙」「森林を守る」「続・森林を守る」と、いままで書いていただいている森関連のコラムを読み返した。実際に森に行った後に読むと、なるほどと思う箇所が増える。いずれもわかりやすく林業のことをおしえてくれるコラムなので、少しでも関心のある方はぜひ読んでみてください。いままでとはすこし違う視点で山や森のことが見えてくると思います。