雑誌「チルチンびと」87号掲載 奈良県 ㈲倭人の家建築
2/3

178天井材は小嶌さん支給のもの。床柱は230年生の杉。「地元材の家を建てることができて、父も喜んでくれました」(麻木さん)。麻木さんがお茶を習っているため、炉を切ってある。 玄関を一歩入ると、香しい木のにおいに包まれる。 妻の麻ま木きさんは「もともと私の実家が製材所を営んでいることもあり、地元である奈良県産の木で家を建てたいと考えていたんです」と話す。夫の康介さんは「そんなときに、新子さんの家を見学させてもらったんです。それまで、ハウスメーカーの展示場にもずいぶん通いましたし、本を読んで調べてもいました。でも、新子さんの家は迫力がすごくて、これぞ本物の木の家だと感じました」と振り返る。「新子さんの家」というのは、前述の新子康次さんが奥さんと暮らす住まい。本誌48号でも紹介した住宅で、自らもかかわる倭人の家建築で建てた夫婦二人の終の住処だ。永井さんは「うちで家を建てようかという方には、新子さんの家を見てもらうことが多いんです。天井や床には吉野杉、柱には吉野檜と、いずれも新子さんが自ら伐った木を使っています」と説明する。 小こ嶌じまさん一家がプランを練った期間は、土地探しと並行して1年ほど。麻木さんは「その間、設計士の方と30回以上打ち合わせしていただきました。こちらの要望にきめ細やかに応じてくださったので、満足できる家になったと感謝しています」と話す。その麻木さんの希望は、家事動線を考慮した暮らしやすい間取り。「フルタイムで働いているので、効率よく家事ができることがいちばんの望みでした。水まわりを一直線にまとめたので、家事もスムーズです」。 一方、康介さんの念願だった書斎は、2階に設けられた。「中央に書棚を設けて、一方を仕事関係のスペースに、もう一方を趣味の音楽のスペースにあてる提案をさせていただきました」(永井さん)。康介さんは「機能的に設計していただいたので、日々の暮らしにゆとりが生まれました。子どもたちも裸足で駆けまわって楽しそうなのが嬉しいですね」と笑う。 懸案だった材については、吉野の杉と檜で統一。土台は檜の赤身、構造材はすべて4寸角、階段と床材は檜と適材適所で使っている。「香りもいいし、目にもやさしい。これから味わいを増していくのかと思うと楽しみです」と話す夫妻の笑顔が、この家の心地良さを物語っていた。願いを叶えた住まいで機能性と楽しみを両立落ち着いた佇まいの和室に、美しい木目が映える。「吉野の木にこだわった家づくりができて嬉しいです」(麻木さん)。玄関ホール。階段の背面には、花や雑貨が飾れるようにニッチを設けた。

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る