雑誌「チルチンびと」別冊22号掲載 山梨県 ㈱山口工務店
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もあった。あるときOMの家と出会って、空気によどみがないこと、冬なのに無垢の木の床が温かいことに感銘を受けたという。子どもたちには「家」の思い出をたくさん持ってもらいたいと考えていた夫妻は、いつかは自分たちの家をと思っていたため、その後は、OMに狙いを定めて工務店をいくつか回った。なかでも山口工務店では、すべての仕事がていねいで美しいことに驚いた。さらに費用面でも納得でき、「見学会には皆勤賞」というほど足を運んだという。「見学会では居心地が良くて、床に座り込んで2〜3時間話し込むような感じでした(笑)」(高弘さん)  そして、「設計には1年かけました」と高弘さんが言う。思いを伝えて描いてもらった図面は、ほぼイメージ通りだったが、さらに細部をていねいにつめていった。山口工務店では、少なくとも3カ月から半年をかけて、設計図を描きあげていくそうだ。  敷地の隣にある恵美子さんの実家に仮住まいしていたこともあり、建築が始まってからも毎日足を運んだ。「毎日が楽しかったです。お婆ちゃんはもっと楽しかったみたい(笑)」と恵美子さん。恵美子さんのお婆さまは86歳になった今もお料理が大好きで、お茶やお菓子を出すことをとても楽しんでいたそうだ。家の完成が近づき、職人さんが減ってくると寂しそうだったとか。ちょうどお茶の時間に帰宅する拓斗くんも、毎日職人さんに声をかけてもらい、家ができるころには「大工になりたい」と言うようになったという。「人間関係がとてもあったかかった」と恵美子さんは振り返る。  家づくりへの思いの強い夫妻は、建築中にも多くのお願いをした。設計をした山口利秋社長が「手持ちの材料があって、棟梁がいいと言えばいいですよ」と言ってくれたそうで、窓の高さを変えたり予定になかった棚をつくるなど、細かな修正をたくさん加えながらつくりあげていったという。「こうしたいと言うと、プロの視点で一緒に考えてくださるのがありがたかった。すごくたくさん要望があったのによく聞いてくださって、頭が下がります」と夫妻が口を揃える。  この家は、長女の日菜子ちゃんの愛称「ひよこ」をデザインし、「ひよこハウス」とも名づけられている。将来、子どもたちの思い出がたくさん残る場所にしたいと、練りに練ってつくりあげた新しい家に住み始めて1年。「子どもたちは思いっきり、この家を楽しんでいます」と、力を込めて恵美子さんが言った。

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