雑誌「チルチンびと」71号 新潟県 家造 iezo ㈱加藤組

住む人が仲よく、ホッとできる幸せな空間

 まちと家、家と人を仲よくさせるのが私の仕事、と語る建築家が建てた住まい。そこに住む人、訪れる人を、「なんだか幸せ」な気持ちにさせるデザインとは。  新潟県北に位置する村上市。海岸には、江戸期に北前船が立ち寄った港が点在し、かつて商人たちがひしめいた町家が往時のにぎわいを偲ばせる。日本海の荒波へと漕ぎ出す船 乗りたちをもてなす、やさしさと人情の文化が息づく街。そんな村上市中を流れる三面川流域の田園地域に加藤邸は建っている。  広々とした景色の中に溶け込むような佇まいをした片流れの屋根。門を思わせる車庫と、建物に囲まれた中庭の横にアプローチが伸びる。建物は若夫婦の暮らす主屋と、ご主人のお母さんの居室がL字型につながる二世帯住宅だ。  薪ストーブのある主屋のリビングは、緩やかな勾配のある天井と、壁をオガファーザーを張った白い伸びやかな空間。南側には2間の大開口があり、濡れ縁を介して庭の景色が 室内に流れ込む。  一方、北側のダイニングの窓は、かつて村上藩主の居城があった臥がぎゅう牛山を絵のように切り取る。窓はすべてサッシを外に出して框を隠し、景色を遮る枠を感じさせない。中にいると、まるで風景と溶け合ったような気分になって、思わずホッする心地よい空間だ。  家とまちを仲よくさせる、 景色が流れ込む窓    「大きな家だけど、1階と2階を含め、部屋と部屋の距離感がすごく近い。家族の気配もいつも感じています。これが設計の力か!と、感動しました」と奥さん。「威圧感を与える外観にしたくなかったので、屋根の高さはできるだけ低く、勾配もなるべく緩やかに。そこで、2階の床を窮屈にならない限界まで低くしました。数センチ低くするのにウンウンと悩んだのです」と、この家を設計した田中敏溥さんは笑う。「近い」という体感はこうした工夫から生まれている。田中さんは、これを1階と2階を“仲よく”させたと表現する。  

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