雑誌「チルチンびと」別冊30号掲載 東京都 天音堂 リフォームラボ㈱ 「樹木と菜園のあるエコな家」
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3ページ 残すことも創造の一つ 上利代表がオーガニックエコに関心をもち始めたのは、土いじりを始めたのがきっかけだという。「3分の1は虫や鳥に食べられ、3分の1は人間が食べ、残りの3分の1は土に還るくらいがいいんじゃないかと思っています。人間は自然のなかで生かされているのだということを、暮らしを通じてお客さまに伝えられたらいいですね。土いじりをしていると、嫌われがちなミミズも土をつくってくれているのだと思うと愛おしく感じますよ(笑)」。この自然と大らかに付き合う姿勢こそが、同社の循環型の家づくりの基なのだ。 上利邸の基本設計は上利代表自らが行った。そのなかで土間は絶対に欠かせなかったという。「当初、家族にはスペースがもったいないと反対されましたが、母の陶芸の作業場であったり、作品を楽しんでいただくギャラリーとしての空間にもなっていますし、庭で採った野菜を扱うのにもいい空間です」。加えて、立ち寄った人が土足のまま気兼ねなくおしゃべりできるのも魅力的だ。土間は外と中を結ぶ空間でもあり、人と人をつなぐ役割も果たす。古民家のつくりを現代の住まいに再生させた。 また、家を建てる際には手刻みにもこだわったという。「お金と時間は機械よりも多少かかるものの、手刻みにこだわったのにはお金に変えられない価値があるんです」。しっかりと組まれた木の美しさはもちろん、安全で長もちする日本の建築技術は世界最古の木造建築である法隆寺に実証されている通りだ。 「家は一生ものなので自信をもってお客さまにお渡しできるよう努めています」。そんな想いから、同社では大工を社員として抱えている。「日本人として、ちゃんと刻みのできる職人さんを後世に残すことが私たちの仕事だと思っています。大工の技術を生かし、文化を継承していきたいですね」(95頁コラム参照) こうした文化を残すことも創造の一つだ。循環型の暮らしは、これからの未来に豊かな自然と文化を創造していく。

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