住宅雑誌「チルチンびと」73号 -花と緑と暮らす-
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金沢駅から歩いて 10 分、古いガ ラス戸を引くと、花咲き乱れる野 山の情景が飛び込んできた。 艶やかな黄や橙色のスカシユリ、 たわわに実をつける紅色のスグリ、 薄水色の可憐なニゲラ、野趣溢れ るカシワバアジサイ、霞を花穂に したようなスモークツリー。 「野の草花を腕に抱えるように、 生けてみたくて」と言うのは花屋 「花のアトリエ こすもす」の店主、 角島泉さん。偶然にも同じ名をも つ、昭和初期の木造「イヅミ薬局」 を活動の場として、 11 年が経つ。 「花のアトリエ」との木彫りの看 板が示すように、ここはただ花を 売る場所ではない。アレンジメン トや生け花教室のほか、角島さん が器作家や音楽家と催す企画展の 古い建物と、 色鮮やかな夏の 草花の饗宴 上2点/「イヅミ薬局」の看板がかかる建物は昭和3年に建てられた木造建築で、登録文化財にも指定されている。緑青色の外壁は、防火のために葺かれた銅板。 店内上部にかけられた紺色の布は、バリで見つけたアンティークのろうけつ染め“ バティック”。  下段右から左へ /従妹の手による店の看板。 /古いケビ ント(医療棚)にガラスを中心とした花器が並ぶ。 /愛用の花鋏。京都であつらえたものもある。 /店内の本棚には植物図鑑の全集が。  18

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