住宅雑誌「チルチンびと」72号‐古き美を愛おしむ暮らし
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ほどよく茶葉が蒸れたのを見計らって、まず一煎。馥郁とした香り を味わいながら二煎、三煎と味や香りの変化を愉しんでいるうちに、気持ちもおだやかに移ろい始める。茶杯を重ねる中国茶ならではの、醍醐味だ。  平安神宮にほど近い、黒塀が続く一角に建つ大正時代の家屋。もとは仕事として改修に携わっていた横山晴美さんが、「不思議な縁やら偶然が重なり」自らこの場所で茶房を営 むことになって4年が経つ。 「自分がこの場所で何をしたいかを考えた時、ゆっくり過ごせるところ が欲しいな、と。かけがえのない時間を過ごし、少しでもいい日だった なと思える場所になってほしくて」。こんな思いを込めて、横山さんは禅 語の「日々是好日」に茶房「好日居」の名をとった。  飛び石に導かれて古いガラスの嵌まった引き戸を開ければ、京町家らしい趣ある室内で、時と国境を越えたさまざまなものたちが響き合う。やさしい音を奏でる古いオルガン、和箪笥に李朝の櫃、中東の絨毯や色鮮やかな器たち……。 もともと持っていたアンティーク 中国の青茶である岩茶に、時々の菓子や木の実、乾菓を添えて。お茶はいく種類かの中国茶のほかに、抹茶、チャイなどを供している。手製の菓子をいただけることも。 上/石油ストーブにのせた焙烙で焙煎することも。 左/灰汁を流すため、茶壺から溢れるほどに湯を注ぐ。お茶に使う水は、毎日鴨川を越えた井戸まで汲みにいき、土瓶で沸かす。

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