住宅雑誌「チルチンびと」71号 -ずっと、居たくなる家-
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 新潟県北に位置する村上市。海岸には、江戸期に北前船が立ち寄った港が点在し、かつて商人たちがひしめいた町家が往時のにぎわいを偲ばせる。日本海の荒波へと漕ぎ出す船乗りたちをもてなす、やさしさと人情の文化が息づく街。そんな村上市中を流れる三みおもてがわ面川流域の田園地域に加藤邸は建っている。  広々とした景色の中に溶け込むような佇まいをした片流れの屋根。門を思わせる車庫と、建物に囲まれた中庭の横にアプローチが伸びる。建物は若夫婦の暮らす主屋と、ご主人のお母さんの居室がL字型につながる二世帯住宅だ。  薪ストーブのある主屋のリビングは、緩やかな勾配のある天井と、壁をオガファーザーを張った白い伸びやかな空間。南側には2間の大開口があり、濡れ縁を介して庭の景色が室内に流れ込む。  一方、北側のダイニングの窓は、かつて村上藩主の居城があった臥牛山を絵のように切り取る。窓はすべてサッシを外に出して框を隠し、景色を遮る枠を感じさせない。中にいると、まるで風景と溶け合ったような気分になって、思わずホッする心

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