住宅雑誌「チルチンびと」70号-火のある家にはいい時間がある
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決。暖炉より暖房効果の高い薪ストーブを採用し、間取りも暖気を効率よく巡らせることを念頭に構成した。 鉄平石とガラスの玄関土間からあがった居間は、台所、食堂そして寝室を含めたワンルーム的なつくりに。中央に薪ストーブを設置することで、吹き抜けを介してつながる2階も含め、家全体を暖める。万が一薪ストーブが使えなくなった場合にも備え、強制循環式ソーラーシステムと床暖 房も併用。  薪ストーブは長野の工房のクッキングストーブを改造した特注品だ。たっぷり薪をくべられるようにしたほか、男性的な印象を与える銀色の座金を黒く塗装。建具に至るまで無垢の木を使ったあたたかみのある空間や、住まい手自ら手がけた家具としっくりなじむ仕上がりとなった。 人と火が支える上質な時間  今年で2度目の冬を迎える岩崎さん。当初は薪ストーブの扱いに手こずったというが、今は料理はもちろん、火がもたらす恩恵を満喫している。居間の大きな窓が切り取る森の景色は、緑生い茂る夏もさることながら、冬は一面銀世界となり息を呑むほど美しいとか。「そんな時、そばに火があるだけでとても豊かな気持ちになれるんです」 冬に備えてストックしている薪は、家を建てる際に伐採した木を利用。薪割りは、施工を担った工務店「風の森」の棟梁親子が好意で手伝ってくれている。同社は移住者のサポートも行っており、岩崎さんの原村暮らしの大きな支えになっているとか。暮らすことと、つくることが一つになった岩崎さんの豊饒な時間。それは、人の輪と火に支えられている。

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