雑誌「チルチンびと」99号掲載「小笠原からの手紙」
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115ん、離島もずいぶん歩きまわりました。齢よわいも米寿となり以前のようにてきぱきと歩けなくなりました。この頃は父島内の軽い活動に参加したり、ささやかな植物の観察などをしています。現場には行けませんが、荒廃地の植生回復の計画や外来種の駆除計画案づくりなど、会の事業に陰ながら力を注いでいます。 森の中を歩くのはとても楽しく、いつまでも植物とおつき合いしたいものです。物関系の文献で調べました。これらの植物は和名、学名ともに諸説がありその取り上げ方にも苦労したものです。そして簡単な解説とキャプションを書いて原稿ができ上がり、さらに3回の校正を経て完成。 小冊子ですが、なかなか大変な作業でした。 私は小笠原に住み始めてから40年。かつては父島や母島はもちろ島に住んでいる人もふだん見てはいるが、名前の分からないものが間間あると思います。植物の名前を知ることで親しみが深まり、野山では小笠原の植物を通して自然を知るよすがとなるでしょう。『フィールドガイド』は掲載された写真を見て手軽に植物を観察できる便利さが特長です。制作にあたってまず写真を撮りに行ったり、集めたりするのが一苦労。つぎにそれらを整理して100余りの候補写真を選びます。そのつぎに植物の和名や学名を調べるのもまた一苦労。 近年、植物の分類体系が従来の主に形態をもとにした分類体系から、分子系統学にもとづく分類体系に変わりました。『フィールドガイドⅢ』は新しい体系に沿ってまとめ、街中の熱帯植物は園芸植特記なき写真=安井隆弥世界自然遺産に登録され注目を集める、小笠原の豊かな自然と文化を、研究者が紹介します。やすい・たかや/1931年生まれ。生物教諭として都立八丈高等学校勤務を経て、78年~91年、都立小笠原高等学校勤務。定年退職後も小笠原に留まり小笠原野生生物研究会を設立。2000年にNPO法人化、理事長となる。同会著『小笠原の植物 フィールドガイドⅠ、Ⅱ、Ⅲ』が小社から発売中。小笠原にて安井隆弥氏。写真=長谷川 博小笠原の風景。父島。完成までの道のり私にとっての小笠原オオイワヒトデ。母島ではよく見かけるが父島では少ない。写真=小林佳子パッションフルーツ。葉柄と対に巻きひげがあり、からみつく。ローレルカズラ。花は大きく、色は薄紫〜淡青系。道側で見かける。ノコギリシダ。小笠原諸島では母島にだけ分布。写真=小林佳子

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