雑誌「チルチンびと」90号掲載 「小笠原からの手紙」 
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N△陰陽池扇池鮫池182島の南にあるこの島は、日本では珍しい「沈水カルスト地形」(*1)という特異な景観で、父島の観光スポットとして人気がある。海鳥の営巣地でカツオドリやオナガミズナギドリなどが見られ、植物ではオガサワラアザミやイソマツ、アツバクコの群落がある。島の中央部の凹地には複数のドリーネ(*2)が並ぶ。その周辺はクサトベラの低木林が幅広く帯状に生育している。南島の成り立ち 南島のある小笠原群島は約6000万年前に海嶺ができ、3000〜2000万年安井隆弥=文、写真小笠原からの手紙vol.24世界自然遺産に登録され注目を集める、小笠原の豊かな自然と文化を、現地在住の研究者が紹介します。南島の自然隆起を繰り返した「沈水カルスト地形」註 カルスト(*1)ドリーネ(*2)地塁(*3)ラピエ(*4)石灰岩地域が溶食によってできた地形。表面にはラピエやドリーネができ、地下には石灰洞(鍾乳洞)ができる。ユーゴスラビアのトリエステ付近の地名に由来する。円または楕円形の輪郭をしたカルスト凹地。ほぼ並列する二つの断層崖により限られた地塊。一般に一つの方向に細長く配列する。石灰岩の溶食によりつくり出されたさまざまな突起。上3点—右上/多肉質で乾燥に強い葉をもつ常緑小低木のアツバクコ。9月頃に赤い実をつける。 右下/ヤエヤマアオキは常緑の小高木で、5~7月に白い花をつける。果実はノニと呼ばれ、健康飲料になる。左/親鳥の帰りを待つカツオドリの雛。下4点—右上/鮫池を望む。南島へはこの湾の奥から上陸する。この丸い地形もドリーネである。 右下/多肉質の葉と茎をもち、岩場に這うように生育するハマスベリヒユ。 左上/カルデラ外壁に群落をつくるモンパノキとクサトベラ。 左下/海側は険しい崖となっている東西の山地に挟まれた中央凹地と陰陽池を望む。父「南島の地形」国土地理院1/25000図を元に作成。

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