雑誌「チルチンびと」85号掲載 小笠原からの手紙
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数で来ると、静かな森の中で森林浴をしながら活動しているようである。メジロやウグイスも遊びにくる。まれにアカガシラカラスバトが顔を出すこともある。自然の中に溶け込むボランティア活動は楽しい。潮に強く、焼けつくような砂浜の厳しい環境でも発芽する。西島の活動現場の環境条件をクリアできる種子として最適であった。 昨年は4回播種し、約1万粒を蒔いた。暑い中、坂道を3回上り下りして現場にたどり着き、ひと休みしてから鍬を振り上げて種を蒔くのは大変である。この現場は眺望がよく、水平線まで青い海を見渡せる。近くをカツオドリやクロアシアホウドリが悠然と飛んでいるのを眺めたりする。季節にはクジラが飛び跳ねるのを見る楽しみもある。春にはオオハマボッスが一面に咲き誇り、お花畑のようである。 今年も5000粒を蒔いている。20~30年後には立派な樹林ができて、鳥や虫なども住める環境になることを期待している。 本年から3年にわたり助成を受けることになった。活動場所は西島の中央より少し北のやや平坦な森で囲まれたところである。 活動の目標は二つある。一つ目は、モクマオウとシマサルスベリがはびこっている林を伐採し、その跡に植林することである。二つ目の目標は、数年前にモクマオウを駆除した跡地に島の在来種の稚樹がたくさん出てきたが、モクマオウの萌芽や埋土種子からのモクマオウの稚樹がこれら在来種の稚樹を圧迫するようになった。この状況を解消するため外来種の萌芽木などを除伐することである。 今年の前半はモクマオウとシマサルスベリを伐採または枯殺で数百本駆除した。後半は第二の目標を達成するための萌芽木の駆除とともに、11月の雨期には周辺から、西島の在来種の苗を移植する予定である。 この活動地は前述の西南西の活動地とは違い、東側には在来種の残存林があり、苗が豊富にある。また、土壌は深く、あまり乾燥していないので、植生回復がうまくいくと期待している。 この活動地は周囲が森に囲まれ、眺望の楽しみはない。少人島で採取した種を西島に持ち込むことはできなくなったのだ。例外としてテリハボク(タマナ)はDNAが島ごとに分かれておらず、複雑に混ざり合っているので、島から別の島への移動は自由である。こうして、いくつかの種の中からテリハボクが浮かび上がった。 テリハボクは海流散布により太平洋の島々の海岸にたどり着き、海岸林をつくる植物である。花王・森づくり活動助成テリハボク並木。海流によって種が運ばれ太平洋の島々に海岸林をつくっている。西島の北側で行われている事業は、本来の植生を回復するため、外来種を除去した後に出た幼木を除去し、その後に在来種を植林する。モクマオウで覆われた斜面を伐採していったん裸地にした上で、小笠原に普通の樹種であるテリハボク(タマナ)の種を播いて樹林を復活させる、西島南側での活動の様子。上:絶滅が危惧されるアカガシラカラスバト。 下:一面に咲くオオハマボッス。

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